本記事では、安全な食用油を選ぶポイントとして、抽出法や原材料の観点から3つの着眼点で解説します。
✔本記事のテーマ
✔本記事の内容
・食用油が製品になるまで【危険因子を分解した】 |
・安全な食用油を見分ける3つの着眼点 |
・【コラム】国内最大の食品公害は油だった! |
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。
オーガニックと食に精通した僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。
この記事の目次
食用油が製品になるまで【危険因子を分解した】
安全な食用油を見分けるためには、食用油が製品になるまでの理解が大事です。
なぜなら、製造工程の中に危険因子が潜んでいるからです。
食用油(植物性のもの)ができるまでの工程はざっくり言えば、以下のとおりです。
原料:油の原料となる大豆や菜種などの穀物は、世界中から調達されます。
搾取:そして集められた原料から、様々な方法で油を抽出します。
精製:抽出された油には色素や有害物質などの不純物が含まれるため、化学物質を使い取り除きます。
商品:精製された植物油は、容器に充填されて食用油として販売されます。
以下、この工程の中で消費者として着目すべき3点をあげます。
安全な食用油を見分ける3つの着眼点
・【着眼点1:原料】原料は遺伝子組み換えの可能性あり
食用油の原料はほぼ海外から調達されています。
その中には、遺伝子組換え作物生産大国であるアメリカ・カナダ、オーストラリアなどの国が含まれているのです。
原料の中でも大豆・トウモロコシ・綿実・菜種の4品目は遺伝子組換えである可能性が非常に高いです。
⇒食用油原料の遺伝子組み換えの割合
農水省が財務省貿易統計から作成した資料によると、各作物の輸入状況と遺伝子組み換えの栽培割合は、以下のように説明されています。
トウモロコシ
日本は世界から輸入するトウモロコシの74.7%をアメリカから輸入しているが、アメリカにおける遺伝子組み換えトウモロコシの栽培率は88%
大豆
日本は世界から輸入する大豆の64.6%をアメリカから輸入しているが、アメリカにおける遺伝子組換え大豆の栽培率は93%
菜種
日本は世界から輸入する菜種の96.8%をカナダから輸入しているが、カナダにおける遺伝子組換え菜種の栽培率は98%
綿
日本は世界から輸入する綿の94.3%をオーストラリアから輸入しているが、オーストラリアにおける遺伝子組換え綿の栽培率は100%
出典:遺伝子組み換え作物の現状について(農林水産省)
もう一度言いますが、これらは全て、日本で使われる食用油の原料です。
⇒日本では遺伝子組み換え表示の義務化はされていない
ここは超重要です。
「遺伝子組換え作物を使っています」と表示義務があれば、まだ、私達は購入を回避することが出来ます。
しかし、食用油については遺伝子組換え作物を使っていても、表示の義務化はされていません。
理由は、加熱や精製の過程で「遺伝子組み換え」されたタンパク質は除去され、検査しても検証できないためです。
なので、私達消費者は、知らないうちに遺伝子組み換えが原料の食用油を使っているかもしれません。
遺伝子組換え作物不使用の食用油を確実に購入するためには、
・「遺伝子組み換えでない」としっかり謳ってある会社の製品を購入する
・上記4以外の作物から作る油(例えばオリーブ油など)を使う
などが考えられます。
・【着目点2:搾取】抽出は化学物質か圧力か
菜種や大豆など油の原材料から油を取り出すには、溶剤抽出法、圧搾法、圧抽法(溶剤抽出法+圧搾法)の3つの方法があります。
結論から言えば、安全かつ美味しい油は圧搾法です。
⇒溶剤抽出法
:化学物質を使って抽出する方法です。
溶剤抽出法は有機溶剤や石油系溶剤を使って油を抽出しますが、これらの溶剤は最終的にほとんど除去されます。
しかし、完全にゼロになるのではなく少量は残留するようです。
⇒圧搾法
:昔ながらの機械を使って、原料に圧力をかけて絞り出す方法です。
圧搾法は、余計な化学物質を使用せず圧力をかけて油を絞り出すので、手間や時間がかかる上、少量しか油を抽出できません。
余分な脱色・脱臭などの精製をしないため、油に原料本来の風味や栄養分がそのまま残され、自然の味や香りを楽しむことができます。
⇒圧抽法(溶剤抽出法+圧搾法)
:圧搾では原料残油が10~20%あり、この残りを採油するために、抽出法を併用します。
圧搾法と溶剤抽出法の合体版の抽出法です。
原料にもよっては絞るのが難しいものもありますが、安全性や風味や栄養分、味や香りの品質を重視したいなら、圧搾法で絞られた食用油をお勧めします。
当然、圧搾法の食用油は、溶剤抽出法の油と比較したとき値段が高くなります。
・【着目点3:精製】栄養素の損失や有害物質の発生
化学物質を使わずに圧搾法で油を取り出すと、その後の工程である精製は、上澄み液を濾過するだけなのでとてもシンプルです。
高温処理も行わないため、カロチンやビタミンなどの栄養素が残ります。
一方、化学物質を使って油を抽出する溶剤抽出法は、さらに化学物質の力を借りて、酸化の原因となる「不純物」などを徹底的に取り除きます。
200度以上の高温処理を複数回施すことによって、原料作物に含まれる栄養の損失、そして有害物質の発生に繋がるのです。
安価に大量生産できるサラダ油などは、このようにして製品化されていることを理解しておくべきでしょう。
安価に大量生産できる食用油は、最初から最後まで化学物質頼りなのです。
参考:サラダ油とは?キャノーラ油との違いなど食用油について解説します
【コラム】国内最大級の食品公害は食用油だった!
カネミ油症事件、1960年代に起きた国内最大級の食品公害をあなたはご存知ですか?
この食品公害の原因は、今回この記事のテーマである食用油でした。
食用油は様々な化学的処理や工程を経ながら作られるのですが、油の臭いを取り除く脱臭工程でPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入してしまったのです。
PCBの加熱によりダイオキシンが発生し、その油を調理して食べた人に皮膚障害、頭痛、手足のしびれ、吐き気、倦怠(けんたい)感などの症状が見られました。
1960年代に発生したカネミ油症事件は、50年以上経った今でも世代をまたいで苦しんでいる方がいます。
油は私達人間にとって、必要不可欠なものです。
たくさんの方が日常的に摂取しているからこそ、被害は大きく拡大したのです。
まとめ
カネミ油症事件をお話しましたが、怖いのは、まだ危険性が分かっていない有害物質の残留等です。
カネミ油症事件が起きた当時、PCBの毒性は全く認識されていませんでした。
しかし、PCBはその危険性から現在、新たな製造が禁止されています。
遺伝子組み換え技術や、食品添加物の話と同じで、後で危険だったと分かっても取り返しがつきません。
そうなる前に、日頃から正しい食用油を選んでおきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。