✔本記事の想定読者
・霜降り牛肉は、日本人だけが好んでいるのか(外国では霜降り肉は食べない)
・なぜ、霜降り牛肉に異常なほど脂肪が付くのだろう(牛の健康状態は大丈夫)
この記事は、上記のような疑問を持っている方向けの記事です。
✔本記事の内容
この記事では、以下のようなことが書かれています。
✔記事の信頼性
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。
オーガニックと食に精通した僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。
この記事の目次
霜降り牛肉は日本だけ?問題は脂肪の付き方
料理番組などで、霜降り肉を高級肉と放送するメディア。でも見方を変えると、別のことが見えてきます。
・霜降り牛肉を好まない外国人【日本だけから好まれる】
以前、とある本を読んだことがあります。
そこには、外国人(フラン人パティシェ)が日本の霜降り牛肉について、以下のように言っていました。
「健康に育った牛についた少しの脂肪、確かにこれは豊かな味があっておいしい。
しかし、無理やりに不自然につけたこれほど多くの脂肪が美味しい訳がないし、身体に良い訳がない。
こんなに身体に悪いものを、どうしてこんなに高いお金を払ってまで食べるのか、とてもおかしなことだと思う」
出典:失われし食と日本人の尊厳 p61 弓田 亨 (著)
最近でこそ、海外の方も霜降り肉に興味を持ち始めたと聞きますが、世界の主流は霜降りではなく赤身肉です。
1枚のカットしたステーキ肉の半分以上が、赤身ではなく脂肪のお肉を、高級だと思っているのは日本人だけかもしれません。
⇒脂肪が多すぎの霜降りは肉本来のうま味を奪う
あまり知られていませんが、霜降り牛肉は多くが脂肪のため、赤みが少なく肉本来のうま味が少なくなります。
農産物流通コンサルタントである山本譲二氏も、霜降り肉について次のように話しています。
うま味を生じるもととなる赤身肉の分量は、当たり前のことだがサシ(霜降り)と反比例の関係にある。
サシ(霜降り)が入れば入るほど赤身が減るので、遊離アミノ酸によるうま味の少ない肉になるということなのだ。
引用:ビタミン欠乏で作る!「霜降り肉」の衝撃事実 山本譲二
海外の方が霜降り肉を好まない理由は、どうやらここにあるようです。
・「日本だけ」は終わりつつある:日本人も気付き始めた
最近、日本人も霜降り牛肉の「異常な脂肪の付き方」に、違和感を覚え始めています。
やっと赤身肉に注目が集まってきたのか… 霜降り肉とか不健康な牛の肉だし、赤身の方が美味しいし体にいいよ
— 鳰 (@jumpingfrog02) March 6, 2018
昔読んだ美味しんぼで海原雄山が、霜降り肉は筋肉に脂肪が混じっている状態でこんな不健康な肉をありがたがって食べている日本人は頭がおかしいと言っててなるほどな〜と納得させられたし完全にとろけるような霜降り肉食べたい。
— バロン塚本 (@satsat) July 24, 2014
日本で好まれる霜降り肉ってのは、健康な状態の牛では生産し得ない物なんですよ。わざと不健康な状態を維持して霜降り肉を作ってるんです。あの肉は、牛の病気の苦しみと引換えに手に入れてるんです。
— 原磯 (@_haraiso) May 16, 2010
情報化社会の中、このような情報は一瞬にして拡散され、誰でも知ることができる世の中になった結果ですね。
・筋肉に入り込む異常な脂肪(サシ)の問題
結論を言えば、霜降り肉は筋肉に脂肪が入り込んだ異常なお肉です。
後述するように、脂肪が溜め込まれやすい遺伝的な特質もありますが、多くは、餌や飼育管理などによって人為的に霜降り肉が作り出されます。
人間でも適度な食事と運動をすればメタボにならないし、赤み(筋肉)より白み(脂肪)が多い状態なんてあり得ません。
誤解を恐れずに言ってしまえば、霜降り肉は病的なお肉とも言えます。
・霜降り牛肉は日本で開発→脂肪を入れ込む技術
筋肉の内部に脂肪を入れ込む霜降り技術は、日本で生み出されました。
なぜなら、1990年代の初めに日本政府は牛乳の輸入自由化を決めたため、海外の牛肉より付加価値をつける必要があったためです。
輸入される海外の安い牛肉に負けないよう高級牛肉のブラン化を進め、畜産業界は霜降り牛に生き残りをかけたと言われています。
⇒等級が高い霜降り肉=「美味しい肉」は間違い
出典:公益社団法人日本食肉格付協会サイトより管理人が加工
こうして、日本の牛肉は筋肉の中の脂肪の量が次第に多くなっていきます。
以下の項目から、日本の肉質は1等級~5等級までの5段階評価で格付けされます。
・霜降り状態
・肉の色沢
・肉の締まりとキメ
・脂肪の色沢と
ちなみに、最上級の肉は5等級です(画像一番右)。本記事に関係するのが「霜降り状態」で、筋肉に脂肪がどのくらい入り込んでいるかを評価します。
写真を見ると、1等級と5等級では脂肪の入り方が全く違いますね。
ただ、最高級の5等級が美味しい肉ではありません。
等級はあくまで、上記4つの総合得点であり、味とは全く関係がないからです。
⇒霜降り牛肉になる理由は血統と飼育方法
結論から話すと、霜降り牛肉は血統(先天的要因)と飼育方法(後天的要因)で決まってきます。
生産者は、高値で取引される5等級(霜降りが多い=筋肉に多くの脂肪を含む)の肉作りを目指しています。
✓血統(先天的要因)
霜降り牛肉となる黒毛和牛は、筋肉内に脂肪が入り込みやすい遺伝的な特徴があります。
逆に言えば、他の種類の牛では黒毛和牛のように綺麗な霜降り肉にはなりません。
✓飼育方法(後天的要因)
高カロリーの配合飼料の給餌、ビタミンAや運動の制限を加える等の技術によって、さらに筋肉内に脂肪が蓄えられます。
両方の要因が上手く重なって、最高級の霜降り肉になります。
霜降り牛は健康状態が懸念される
血統は仕方ないにしても、飼育方法で筋肉内部まで人為的に脂肪を入れ込まれた牛は健康ではありません。当たり前ですよね。
・【肉質重視】アニマルウェルフェア的な問題
霜降り肉となる多くの牛が、失明や歩行困難、脂肪肝や動脈硬化、糖尿病を患っています。
病気になる理由は、「最高級のお肉=5等級」を目指すために、以下のような飼育を行っているからです。
・自由に動き回ることさせない(運動制限)
・バランスの悪い餌を与える(高カロリーの配合飼料ばかり)
・ビタミンAなど必要な養分を欠乏させる
等級の高い最高級のお肉に仕上げるには、牛本来が望む(牛本来の欲求を満たす)飼育を放棄せざるを得ないのです。
アニマルウェルフェアの視点が抜け落ちた飼育は、不健康な畜産物として市場に流通することになります。
参考:アニマルウェルフェアを知ってる?安全な肉や卵の必須条件だよ
・多くの内臓系肉は廃棄される現状
運動不足にして高カロリーのエサばかりを過剰に与えるので、消化器系や循環器系の病気も多くの牛が患っています。
このため、内臓系のお肉は、とても人間が食べられる状態ではなく、廃棄されている現状があります。
まとめ:「日本だけ」にならないために
「日本だけ」の状態は、霜降り牛に限った話しではありません。
豚でも鶏でもアニマルウェルフェア(家畜福祉)を考えない、劣悪な飼育環境での生産活動は、海外から遅れていて批判されています。
日本に住んでいると当たり前になって気付かないことでも、外からみると異常なこともありますよね。
「日本だけ」が世界から取り残されないように、僕ら消費者もできることがあります。興味のある方は、ご覧ください。
参考:アニマルウェルフェア進展の鍵は消費者【できることはエシカル消費】
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。