✔本記事の想定読者
・日本のアニマルウェルフェアにおいて、牛・鶏・豚はどうなっている?
・アニマルウェルフェアを正しく理解して、お肉や卵を選ぶ選択肢を増やしたい
この記事は、上記のような疑問を抱いている方向けの記事です。
✔本記事の内容
この記事では、以下のようなことが書かれています。
✔記事の信頼性
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。
オーガニックと食に精通した僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。
この記事の目次
【総まとめ】豚・鶏・牛のアニマルウェルフェア
日本の畜産現場の現状については、今まで、個別記事に書いてきましたが、今回は薄く広く網羅的にまとめます。
詳細を知りたい方は、リンクを貼った個別の記事をご覧ください。
・【遅れる日本のアニマルウェルフェア】豚編
豚はとにかく繊細な家畜です。日本の養豚業は、アニマルウェルフェアの精神からは遠く離れたところで生産活動が行われています。
⇒日本の養豚の問題点を浮き彫りにした豚コレラ
豚コレラが大流行した理由は、豚本来の欲求が満たされない飼育環境で免疫力が低下しているからです。
・狭い畜舎にぎゅうぎゅうに詰め込まれ、自由に走り回ることが出来ない状態での飼育
・コンクリートの上で自由な身動きがとれず、自分の糞や尿にまみれ決して衛生的とは言えない環境
日本の豚は、日常的にこのような飼育環境で育てられます。この結果、多くの豚は免疫が低下して病気になりやすくなります。
豚コレラの感染が広がり続けた原因は、ここにあります。
⇒【養豚農家談】アニマルウェルフェアの精神はありません
アニマルウェルフェアを実践し、放牧で養豚経営している農家に話を聞きました。内容をまとめる以下のとおりです。
・豚を蹴ったり叩いたりして、狭い畜舎の中で人間に従わせようとする
・養豚現場では、出荷まで辿り着けない命がたくさんある
・劣悪な環境下におかれているので、病気になりやすく抗生物質等の薬剤が必須
・養豚でアニマルウェルフェアの実現が難しいのは、生産コストが上がり非効率だから
上記のことは、以下の記事で詳しく解説しています。
・【遅れる日本のアニマルウェルフェア】鶏編
鶏肉や卵についても、生産環境は豚と変わりません。
少しでも安く仕上げるために、アニマルウェルフェアを無視した効率的な生産がされています。
⇒【まるで工業製品!】かわいそうなブロイラー
結論から言えば、スーパーでよく目にする国産若鶏(=ブロイラー)は、生産性を重視する人間によって改良された鶏です。
人間の手によって鶏自身が望まない改良を加えられた結果、以下のような副作用があります。
・短期間で急成長するように改良されたため、腰や膝の骨格が身体を支えることができなくなり、歩行困難に陥る鶏も多い
・商業用のブロイラーの四羽に一羽は足が不自由な上、大きな胸筋が心臓の負担になって心臓麻痺などで若死にする
・健康な鶏でも通常の鶏のように、性的成熟を迎える月齢まで生き延びる鶏は皆無
これが日本の鶏肉で9割以上の流通を占める、国産若鶏(ブロイラー)の実態です。
上記のことは、以下の記事で詳しく解説しています。
⇒【養鶏農家談】アニマルウェルフェア無視で激安卵になる
アニマルウェルフェアを実践し、放し飼いで採卵経営している農家に話を聞きました。内容をまとめる以下のとおりです。
・日本の採卵鶏の9割以上はかご(ケージ)飼育で、鶏は自由のない飼育
※ケージに詰め込んで飼育する方が生産効率も高く、生産コストも下る
・過度なストレスにより、結果的に免疫力が低下した病的な鶏が多い
・病気を防ぐために、大量の抗生剤や殺菌剤が必要となる
驚くことに、養豚農家の方と同じことを言っています。鶏も豚と同じように、アニマルウェルフェアとは無縁のようです。
上記のことは、以下の記事で詳しく解説しています。
・【遅れる日本のアニマルウェルフェア】牛編
豚や鶏のように、安さや効率性を重視するために、アニマルウェルフェアが無視されるとは限りません。
高級感を演出するために、アニマルウェルフェアを無視した飼育をする場合もあります。
⇒【霜降り牛肉】高級路線でアニマルウェルフェアを無視
霜降り肉を「高級で旨い牛肉」と思っているのは、日本人くらいではないでしょうか。
結論を言えば、霜降り肉は筋肉に脂肪が入り込んだ異常なお肉です。
・自由に動き回ることさせない(運動制限)
・バランスの悪い餌を与える(高カロリーの配合飼料ばかり)
・ビタミンAなど必要な養分を欠乏させる
上記のように、等級の高い最高級のお肉に仕上げるには、牛本来が望む(牛本来の欲求を満たす)飼育を放棄せざるを得ないのです。
上記のことは、以下の記事で詳しく解説しています。
アニマルウェルフェアの理想と現実で揺れる日本
ここまで書かれてある内容をご存知であれば、あなたは食の裏側が見えている「食リテラシー」の高い消費者です。
普通の消費者は、農場と食卓の距離が遠すぎるため、アニマルウェルフェアという言葉すら知りません。
・日本のアニマルウェルフェアは遅れ過ぎている
ただ、これだけは覚えておいて下さい。
海外では消費者にまで、アニマルウェルフェアの考え方が普通に浸透しています。日本は、アニマルウェルフェアの超後進国なのです。
・遅れ過ぎる理由は消費者にある
理想は、アニマルウェルフェア製品が簡単に買えること。でも、現実は違います。
日本でアニマルウェルフェアが進まない理由は、生産コストが上がることや、生産効率が落ちるためです。
すなわち、価格がお肉や卵の価格が店頭で上がることを意味します。
そう、消費者が安いお肉や卵を望んでいるため、生産者はアニマルウェルフェアに配慮する必要がないのです。
※敢えて、生産コストを上げる必要はありませんよね。
僕たち消費者も日々の消費活動を見直す時期に、差し掛かっているのかもしれません。
日本のアニマルウェルフェアは、理想と現実の間で揺れています。
まとめ:【提案】アニマルウェルフェアは考え方次第
・アニマルウェルフェアは大事だし、そのような製品を積極的に購入したい
・しかし、割高になるとお財布が心配
9割の方がこのように考えているはずです。
そんなあなたは、以下のように少しだけ考え方を変えてみるだけで、もっとアニマルウェルフェアに配慮された畜産物を手に取りやすくなりませんか?
・たくさんではなく、少量のお肉や卵を大切に食べる
・食は未来の健康への投資!将来、病気になって高額な医療費を払うより、今ちょっぴり高い買い物をしよう
そんなに難しいことを考えず、消費のマインド(考え方)を少し変えるだけ。
これだけで、家畜が幸せに生きることができ、あなたもアニマルウェルフェアに貢献できるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。