日本と海外のアニマルウェルフェアの現状比較【日本は超遅れてます】

本記事のテーマ(説明画像)

✔本記事の想定読者

・日本のアニマルウェルフェアの現状を知りたい

・日本と海外のアニマルウェルフェアの違いを、具体的に知りたい

上記の疑問を持っている方向けの記事です。

記事の前半では、日本と海外のアニマルウェルフェアの現状比較について。

後半では、アニマルウェルフェアに関する日本の近年の動きについて解説します。

✔本記事の内容

この記事には、以下のようなことが書かれています。

・【悲報】日本は海外と比較してアニマルウェルフェアの超後進国

【悲報】日本は海外と比較してアニマルウェルフェアの超後進国(説明画像)

・アニマルウェルフェアに関する日本と海外の法規制の比較

アニマルウェルフェアに関する日本と海外の法規制の比較(説明画像)

・アニマルウェルフェアに関する日本の動き

アニマルウェルフェアに関する日本の動き(説明画像)

✔記事の信頼性

この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。

オーガニックと食に精通した僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。

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日本と海外のアニマルウェルフェアの現状比較【日本は超遅れてます】

結論、日本のアニマルウェルフェアは、悲しいくらい海外と比較して遅れをとっています

・【悲報】日本は海外と比較してアニマルウェルフェアの超後進国

家畜の自由を奪う飼育法の代表として、採卵鶏の「バタリーケージ飼育」や「養豚のストール飼育」があります。

知らない方が多いと思うので、画像を見ながら解説です。

バタリーケージ飼育とは、ワイヤー製の金網の中に鶏を詰め込み飼育する方法で、鶏の自由がない超過密飼育です(下写真)。

ストール飼育とは体の方向転換体すらできず、一頭がぎりぎりに入る鉄枠檻の中に母豚を拘束する飼育法です(下写真)。

日頃、スーパーで日本人が購入する卵やお肉は、このようにアニマルウェルフェアを考慮せずに育てられたものがほとんどです。

2つの写真(飼育)の共通点は、家畜の自由が全く無いことですね。

これはアニマルウェルフェアの精神である「五つの自由」から反しています。

「五つの自由」については、「アニマルウェルフェアを知ってる?安全な肉や卵の必須条件だよ」で詳細解説しています。

⇒日本のバタリーケージ飼育は9割以上

僕らがスーパーで見る卵のほとんどは、バタリーケージ飼育された卵です(9割以上です)。

一方、海外ではバタリーケージを廃止する動きです。下表で、海外の状況をまとめましたのでご参考下さい。

 

対応など

EU

2012年から、バタリーケージ禁止。

アメリカ

カリフォルニア州、ミシガン州、オレゴン州、ワ シントン州、オハイオ州、マサチューセッツ州で、バタリーケージ禁止を州法で制定。

オーストラリア

オーストラリア首都特別地域ではバタリーケージの使用を禁止、タスマニアでは、2013年から新しい バタリーケージの運営を禁止。2020年にケージ飼育を禁止予定。

ニュージーランド

2022年までにバタリーケージを廃止。

スイス

1992年にケージ飼育は完全になくなり、屋外放牧もしくはエイビアリーや平飼いに切り替わっている。

インド

動物福祉委員会が、全ての州政府に対し、バタリー ケージの使用禁止と2017年までの段階的な廃止を勧告。

出典:認定NPO法人アニマルライツセンター資料より引用

ちなみに、僕が取引している農家さんの卵は、バタリーケージ飼育ではありません(下写真)。

アニマルウェルフェア対応の農場では、このような飼育になります。

生産者がなぜ、バタリーケージ飼育をせず、アニマルウェルフェアを重視するのかをインタビューしていますので、ご参考下さい。

>>平飼い卵はなぜ安全なのか?養鶏農家が語るアニマルウェルフェア

⇒日本の妊娠ストール飼育は8割以上

日本は、雌豚の妊娠ストール飼育は8割以上で、多くの母豚が豚本来としての欲求を満たされることはありません。

一方、海外では鶏のバタリーケージ飼育同様、廃止の方向に舵を切っています。

 

対応など

EU

2012年までに段階的に廃止し、2013年から全面禁止。

アメリカ

(禁止が決まった州)

フロリダ、メイン、ロードアイランド、オレゴン、アリゾナ、カリフォル ニア、コロラド、ミシガン、マサチューセッツ、オハイオ

オーストラリア

豚肉業界が、2017年までに自主的に廃止することを決定。

ニュージーランド

2015年 以降禁止。

スイス

交配後および出産前の限られた期間を除き、妊娠ストールの使用を禁止。

南アフリカ共和国

業界が2020年までの妊娠ス トール廃止を目標。

出典:認定NPO法人アニマルライツセンター資料より引用

僕が取引きしている豚肉の生産者は、日本でも珍しい放牧を行っています(下写真)。

アニマルウェルフェア対応の農場では、このような飼育になります。

生産者がなぜ、アニマルウェルフェアを重視し、放牧を行っているかをインタビューしていますのでご参考下さい。

>>養豚は放牧が理想!アニマルウェルフェア実践者が語る養豚の真実

・アニマルウェルフェアに関する日本と海外の法規制の比較

他にもアニマルウェルフェアの観点から海外は規制をしていることがあります。例を挙げると、以下のとおりで、どれも日本では当たり前に行われています。

豚の麻酔なしでの去勢禁止

:豚肉の臭気を消すために子豚の頃に去勢すること(基本、麻酔なしで行う)

鶏のくちばしの切断の禁止

:過密飼育でお互いを突きあうことを防ぐため、くちばしを切断される

絶食による強制換羽禁止

:卵を産ませ続けるために強制的に飢餓状態にして、羽を抜け落ちさせる行為

これらの行為に対する日本と海外の規制を、整理したものが以下の表になります。

 日本ヨーロッパアメリカ

豚の妊娠

ストール

規制なし

規制あり

規制あり
豚の麻酔無しでの去勢禁止

規制なし

規制あり

規制なし
バタリーケージ禁止

規制なし

規制あり

規制あり
鶏のくちばしの切断禁止

規制なし

規制あり

規制なし

絶食による

強制換羽禁止

規制なし

規制あり

規制あり

出典:認定NPO法人アニマルライツセンター資料より引用

⇒法規制が遅れる日本

この表で、日本がどんだけ遅れているかが分かりますね。

アニマルウェルフェアは、動物愛護団体が「可愛そう」と言っているような感情的な問題ではなく、世界各国が真面目に取り組むべきことです。

⇒政策とセットで法規制を強めるEU

EUはアニマルウェルフェア畜産へ転換する農家に対して、補助金を出して広がりを後押ししています

アニマルウェルフェアは生産性や効率性が重視されず、家畜の自由を確保する飼育法なので生産コストが高くなります。

これでは農家が転換することは難しいので、補助金で農家を支えているのです。

EUの消費者についてもアニマルウェルフェアについての認知度は高く、例えばオランダなどはNGO組織による認証マークも作られています(下画像)。

⇒州単位で法規制が加速するアメリカ

アメリカのアニマルウェルフェアの取組みは、アメリカ合衆国としてより、州単位で取組みが進んでいる状況です。

また、Costcoやマクドナルドなどのような大手の小売や外食なども、ケージフリーの卵に切り替えると宣言しています

米国消費者のアニマルウェルフェアの関心の高さを、うかがい知ることができますね。

・動物保護指数から見る世界と日本のギャップ

動物保護指数ランキング画像

出典:https://api.worldanimalprotection.org/

もう一つ、日本のアニマルウェルフェアの遅れを示す客観的なデータを紹介します。

世界動物保護協会(WAP)という国際的な動物保護活動を行う組織が、世界50カ国の動物保護指数(API)を公表しています。

簡単に言えば、「アニマルウェルフェア(動物の福祉)に、国としてどの程度配慮しているか」を見るもので、A~Gのランクで評価されます。

Aが高評価でアルファベットが下がるほど低評価です。

この評価を見ると、日本の評価はE評価で下から数えた方が早いです。

アニマルウェルフェア先進地であるEU各国はB、C評価が多いのとは対照的です。

アニマルウェルフェアに関する日本の動き

最近では、日本でもアニマルウェルフェアという言葉を聞く機会が増えました。理由とした以下の2つがあると思います。

・東京オリンピックのアニマルウェルフェア問題

アニマルウェルフェアに対する日本の取組みの悪さに、海外のオリンピック選手達は改善要求を突きつけています。

今まで開催されたオリンピックの食材から考えると、日本の畜産物はあまりにもアニマルウェルフェアの意識が低いからです。

参考:東京オリンピックのアニマルウェルフェア問題【日本の畜産物はNO】

日本は、海外に向けたお肉や卵の輸出が少なく、今まで、厳しい世界の目から逃れられていました。

だから、海外と比較してアニマルウェルフェアが進みませんでした。

ノーマークだった日本の畜産が、世界の目にさらされるきっかけになったのが東京五輪なのです。

・国会議員もアニマルウェルフェア問題に動き出した

2016年の3月の国会で「豚の妊娠ストール」や「鶏のバタリーケージ」などについて議論されています。

このことで、多くの国民が日本の畜産現場の劣悪さを知るきっかけとなり、衝撃を受けました。

 

また、2020年2月に動物福祉(アニマルウェルフェア)を考える議員連盟が、立憲民主党を中心に設立されています。

このように、既にアニマルウェルフェアは、国をあげて取り組むべき日本の畜産の課題になっています。

 

まとめ:今が日本の畜産の転換するタイミング

多くの日本人は国会での質疑や、東京オリンピックのメダリストが日本の畜産物を批判したことでアニマルウェルフェアという言葉を知りました。

 

そして、この記事で、日本がどれくらい海外から遅れているか知りました。

 

消費者であるあなたができることは、消費活動でアニマルウェルフェアに配慮したお肉や卵を購入することです。

このようなお肉や卵は、まだまだ日本には少ないので、スーパーや生産者に声をあげていくことが大事です。

 

アニマルウェルフェアを日本で推進するために、鍵を握っているのは意外と消費者だったりします。

参考:アニマルウェルフェア進展の鍵は消費者【できることはエシカル消費】

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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