✓本記事の想定読者
記事では化学肥料にまつわる、このような不安や疑問を抱えている方向けの記事です。
✓本記事の内容
✔記事の信頼性
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営している有機農家です。
かつて化学肥料を使用し、その害に気付いた僕が書く記事なので、信頼性は高いと思います。
化学肥料の3つの害
かつて、僕は農業を本格的に始める前に、家庭菜園で趣味として化学肥料を使用していました。
仕事でも、化学肥料をたくさん使う農家の畑を視察していました。
そんな僕が書く、化学肥料の3つの害。
一般の消費者や、農業初心者にも知ってもらいたくて記事を書きました。
・【1つ目の害】化学肥料は土壌被害を招く
化学肥料の1つ目の害は、土壌に及ぼす影響です。
⇒化学肥料を使うと土が死ぬ
経験上、確実に言えることです。化学肥料をいつも大量に使う畑では、土が砂のようになり、素人が見ても明らかに土が痩せています。
畑で化学肥料を使い続けると土壌生物がいなくなり、土は弾力性を失い、固く、活力のない死んだ土になってしまいます。
⇒化学肥料が土壌被害を招くメカニズム
そのメカニズムは以下のとおりです。
本来、畑の土の中には数えきれないくらい、たくさんの土壌動物(オケラやミミズなど)や微生物がいます。
豊かな土では、土壌動物が野菜や雑草の根を食べ、その糞を微生物が分解して植物が育つ栄養になります。
養分として植物に吸収された後に土中に残った化学物質は、時として微生物たちに猛毒です。
その結果、化学肥料をまかれた土壌は、以下のように変化します。
・土中の有機物を分解し栄養素を生み出す、微生物の活躍する場がなくなる
・さらに化学肥料によって仕事を奪われた微生物は、やがて土からいなくなる
※化学肥料は水に溶けるだけで、微生物を介さずにすぐに吸収される
森の中で人間が何も手を加えないのに植物が立派に育つのは、自然の循環の中で土と土壌生物が健康に生きているからです。
・【2つ目の害】化学肥料は健康被害を招く
ここで言う健康被害には、作物の健康被害と、人間の健康被害の2種類あります。
⇒化学肥料の多用は野菜を不健康にする
化学肥料はとにかく効き目が早いです。
水に溶けるだけで、すぐに吸収されてしまうため、与える分量を間違えると、必要とする以上の栄養を与えてしまうことになります。
実は、たくさんの養分を溜め込んだ野菜はメタボ野菜といって、不健康な野菜なのです。
人間が食べ過ぎて、身体に脂肪を溜め込むのと同じですね。
⇒化学肥料の多用は人間を不健康にする
専門的に言えば、植物体内に溜め込まれる物質は「硝酸態窒素」と言います。
この物質(硝酸態窒素)は、ハムやベーコンの発色剤としても使われる危険な物質で、国も注意喚起を促しています。
※実際に、海外ではこの硝酸態窒素が原因で、子供が亡くなっているようです。
参考までに、環境省のパンフを掲載しておきますネ。
>>「未来へつなごう 私たちの地下水 〜気づいてますか?硝酸性窒素汚染」
肥料と硝酸態窒素の関係は、以下の記事でも詳細に解説していますのでご参考下さい。
>>「有機野菜=安全」の嘘【野菜選びのコツは色の濃いものを避ける】
化学肥料は手軽に大量に散布でき、効き目の速効性から、有害な硝酸態窒素を含みやすくなります。
・【3つ目の害】化学肥料は病害虫被害を招く
化学肥料による3つ目の害は、病害虫被害です。
有機の世界では有名な話ですが、窒素を含む肥料を多く与えると野菜が病害虫に攻撃されやすくなります。
化学肥料を大量に使っていた頃の僕が作った野菜(酷い虫食いです)
先程のメタボ野菜の続きになりますが、これにはちゃんと根拠があります。
野菜は体内に溜まった窒素成分を吐き出そうと、空気中にガスとして放出します。虫達は放出された窒素をめがけて飛んできます。
そして、人間が食べることのできないほど食い荒らします。
植物体の免疫力が低下しているためか、細菌やウイルスによる病気にも感染しやすくなります。
※これは、化学肥料に限ったことでなく、有機肥料でも窒素分を多く与えすぎると同じです。
⇒肥料散布→病害虫発生→農薬散布のスパイラル
経験上、集中的にガスが発生し、病害虫が集まり、野菜が壊滅状態になりやすいのは、有機質肥料より化学肥料のような気がします。
結局、化学肥料の過剰散布によって発生した病害虫を、農薬を使って抑えようとします。
「肥料散布→病害虫の発生→農薬で抑える」。
このような負のループから、抜けられなくなっているのが現状です。
【どっちがいい?】化学肥料と有機肥料
化学肥料と有機肥料の違いを知らない方のために、簡単に解説しますネ。
有機肥料は、油粕や米ぬかなど植物性の有機物、鶏糞や魚粉、カキ殻など動物性の有機物を原料にした肥料のことです。
化学肥料は鉱石や空気中の窒素ガスなど、自然界に存在する無機物を原料に化学合成した肥料のことです。
あなたの気持ち、よく分かります。ちょっと難しいですね。
農業をしていない一般の消費者は、以下のように覚えておけば簡単です。
・化学肥料はサプリメンと同じです
化学肥料は水に溶ければ吸収可能となる(土壌微生物の分解は必要ない)。⇒サプリは、消化の過程がなくダイレクトに僕らの栄養源になりますよね。
効果に速効性はありますが、「美味しい」などの幸福感は感じることが出来ません。
だから、化学肥料は人間でいうところの、サプリメントと覚えておきましょう。
・有機肥料はご飯と同じです
有機肥料は土壌微生物が分解することで吸収可能となる⇒人間も同じですよね。
食べたご飯が、僕らの体の中で時間をかけて消化され、栄養として体内に行き渡ります。
だから、有機肥料は人間でいうところの、ご飯と覚えておきましょう。
重要なのでもう一度言いますね。
人間に例えるなら、有機肥料はご飯で化学肥料はサプリメントです。
化学肥料と有機肥料、どちらを使ってもメリットとデメリットがあります。
・んで、化学肥料と有機肥料どっちの肥料がおすすめ?
経験したことがある農家でないとピンとこないかもですが、僕は、この3つの害を目の当たりにしました。
そして使うのが、怖くなり、化学肥料の使用を止めました。
僕にとっては、化学肥料を使うメリットが一切なかったです。
このような理由もあり、僕は、自分で有機肥料を作って畑で使用しています。
どのように、有機肥料を作るのかを以下の記事にまとめています。
>>おすすめの有機jas適合資材2つと有機種子【有機jasはこれでOK】
農家が3つの害を知っても化学肥料を使う理由
ここまで、化学肥料を使うことによる3つの害について解説しました。
ここまで読んだあなたは、「じゃあ、何で農家は化学肥料を止めないの?」と思ったことでしょう。
僕の個人的な意見になりますが、農業(農産物)が工業製品化して市場経済の中にがっちりと組み込まれているからです。
定期的に安定した量と、安定した品質を市場は求めます。
出来るだけ早く成長させ、出来るだけ早く収穫した方が農家としても1ほ場当たりの収益は大きくなります。
これを実現するためには、安価で効き目に速効性がある化学肥料を使用するのが一番手っ取り早いのです。
・産地の責務を果たすために化学肥料の害は無視される
僕は、あるキャベツの産地を視察したことがあります。
化学肥料の使用過多でそのキャベツ畑は、砂場になっていて土は死んでいました。
それでも、毎年大量の化学肥料と農薬を使い続けます。
なぜなら、産地として安定的に市場にキャベツを出荷する責任が彼らにはあるからです。
農家が危険だと分かっていても、農薬を止めることが出来ない理由も同じです。
農家の農薬使用については、以下の記事で詳細に解説していますのでご参考下さい。
>>【農薬散布は悪?】なぜ農家は危険と分かっている農薬を使うのか
まとめ:ご飯(有機肥料)とサプリ(化学肥料)どちらを食べたい?
あなたは、ご飯(有機肥料)とサプリメント(化学肥料)、どちらから栄養を取りたいですか?
僕は、ご飯から体に必要な栄養を摂りたいと思います。
自分が有機JAS認証を取得していて、化学肥料が使えないと言うより、自分がご飯から栄養を摂りたいので有機肥料を使っています。
この記事で、あなたの探していた答えが見つかったのなら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。