✔本記事の想定読者
・有機野菜を生産する農家は、どのような苦労があるの?
・有機野菜を選ぶ参考として、農家の苦労を知っておきたい
この記事は上記のような疑問を抱いている、有機野菜に興味のある方向けの記事です。
✔本記事の内容
この記事には、以下のようなことが書かれています。
✔記事の信頼性
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営する有機jas認証農家です。
実際に有機野菜を生産している僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。
【消費者は知らない】有機野菜の生産農家が本当に苦労を買う裏話
「苦労は買ってでもしろ!」
昔の方が言っていた言葉ですが、有機農家(有機JAS認証農家)は、本当に苦労をお金で買っています。
・【半端ない】有機野菜の生産農家がお金を払って買う3つの苦労
冗談ではなく、これは本当の話です。有機農家は大きく3つの苦労を買っています。
ちなみに、ここでいう有機野菜とは、有機JASマークが付いた有機JAS認証野菜のことです。
有機野菜と無農薬野菜の違いが分からない方は、以下の記事を読んでこの記事に戻ってくれば理解が深まります。
>>有機野菜と無農薬野菜の違い【ずばり法律に監視されるか否かです】
⇒【苦労1】有機JAS認証を取得のための準備
有機JAS認証を取得するのは、とにかく大変です。最低1年間は、毎日の栽培記録を付ける必要があります。
これとは別に、審査をしてもらうための書類を作る必要もあります。
結局、僕の場合ですが準備を1年間して書類作成し、認証を取得するまでに5~6万円払いました。
有機JAS認証の取得にどれだけ大変なのかは、以下の記事で解説しています。
>>有機JAS認証取得は難しい!【不合格した】僕が語る失敗しない方法
⇒【苦労2】有機JAS認証を継続するための日々の作業
晴れて有機JAS認証を取得すれば、有機JASマークを貼って農産物を出荷できます。
但し、認証を取得したその日から、以下のような膨大な記録を漏れなく付ける必要がでてきます。
・いつ種をまいて、どんな管理をしたのか?
・いつ収穫して、どこの誰にどのくらいの量を出荷したか?
・出荷の際に使用するJASマークは何枚で、不正に使用していないか?
これが、マジでくそ大変で有機農家はうんざりしながら、毎日頑張っています。
どんな記録かは、具体的に以下の記事にまとめています。
参考:【有機農家の悲痛な告白】有機野菜が危険かは記録を知って議論して!
この記録は、認証を継続するために必要で、次に解説する検査で記録がしっかり付けられているかチェックされます。
なお、認証を継続する(有機JAS認証農家でいるため)には、毎年、お金を支払う必要があります。
更新手数料みたいなものです。他の農家がしない大変な記録を管理して、さらにお金まで支払うのです。
まさに、苦労をお金で買っていると思いませんか?
⇒【苦労3】有機JAS認証を継続するための第三者検査の対応
多くの消費者は有機(JAS)野菜が、毎年、第三者から厳しい検査を受けていることを知らないでしょう。
毎年、JASの基準に沿って野菜が生産されているか、第三者の視点で厳しくチェックされます。
何と、検査官が畑にやって来る交通費なども農家の負担(自腹)です。
あなたは信じられますか?
検査の受け入れは認証事業者の義務なので、強制的にテストを受けさせられた上に、お金まで取られるのです。
【謎を公開】有機農家の苦労の元凶【第三者検査の内容】
有機野菜の生産農家が、どのような検査を受けているか解説します。
この第三者検査こそ、有機農家の苦労の元凶なのです。
・有機野菜の危険性を指摘する人ほど第三者検査を知らない
多くの学者や農家、消費者が有機野菜の危険性を指摘します。
よくある危険性の指摘が、「有機JASでも使用できる農薬や化学肥料は認められている」です。
確かに、僕もそれは一理あると感じて、以下の2つの記事にまとめています。
>>【残念】有機野菜の農薬使用はあり得る【有機JAS認証農家の本音】
>>【問題あり】有機野菜は肥料で危険になる!【有機JAS農家の本音】
しかし、まじめな有機農家であれば、このように言われることが悲しいし、悔しいです。
なぜなら、僕ら有機JAS農家は、お客様により安全な野菜を届けるために、敢えて上記のような苦労をお金で買っているからです。
⇒検査される有機野菜とされない有機野菜の違い
有機JAS認証を受けずに「私は、肥料や農薬を使わないので有機農家です」と言う“自称有機”の農家もいます。
基本、有機JAS認証の野菜と同じように、農薬や化学肥料は使用していないはずです。
第三者のチェックがないので、「使用していないはず」としか書けません。
例えばですが有機JASの検査では、検査員(第三者)があなた(消費者)に代わって、このようなことを確認してくれます。
そして、これらをクリアしたものだけが有機JASマークを貼り、有機野菜として販売することが認められるのです。
“自称有機”の農家の有機野菜は、上記の内容までは証明出来ないのです。
・【体験談】有機野菜の生産農家は毎年このような検査を受ける
先日、僕は有機JASの第三者検査を受けました。その様子は、一般の消費者がほとんど知ることはないと思います。
検査の前に、検査官に頼み写真撮影の許可を得ましたので、写真を掲載しながら検査の流れを追っていきます。
⇒①検査官は畑を厳しい視点でチェック
写真は、僕(白いワイシャツ)を着ている僕が検査官(青いシャツ)に、畑の様子を説明してている様子です。
検査官は、以下のような質問をしながら、JAS法の基づいた栽培がこの畑で行われているのかを確認します。
何気ない会話の中から、このようなことを確認されます。
⇒②畑だけでない!検査官は資材置き場や貯蔵庫もチェック
チェックされるのは、生産活動を行う畑だけではありません。
写真は僕が、検査官に資材置場兼野菜の貯蔵庫で、自作した「ぼかし肥料」の説明を行っているところです。
化学肥料が使えないため、米糠などを使って「ぼかし肥料」を作っているのですが、その材料や作り方の説明を求められました。
作り方や材料は事前に届出を出して了解を得ていますので、実際にその手順や材料を使っているのかの確認です。
他にも、
など、JAS規格に基づいた細かなチェックが入ります。
⇒③検査官は記録関係書類を厳しい視点でチェック
外の確認作業が終わると、今度は室内で書類検査です。
写真は、僕が検査官に栽培記録を説明している様子です。有機JAS認証制度で農家を一番苦しめているのが記録管理です。
※有機JASではどんな作業をしても、記録を付けることが求められます。年間を通すと、数百ページの膨大な記録になることもあります。
参考:【有機農家の悲痛な告白】有機野菜が危険かは記録を知って議論して!
検査官は、以下のようなことをチェックします。
今回の検査では、このようなことを全て含めて、2時間30分みっちりとチェックされました。
少なくとも、有機JASでは、農家の日々の管理やこのような第三者検査で、「危険因子は取り除かれている」と僕は思います。
まとめ:農家の苦労が報われる瞬間は消費者の声
ここまで書いてきたように、有機農家は冗談ではなく本当に苦労を買っています。
では、その買った苦労が報われる瞬間は何でしょう?
答えは簡単です。消費者から「美味しかった」など、何らかの感想をいただいたときです。
僕ら有機農家は時として、誰のために、こんな辛いことをお金を支払って我慢する必要があるのか落ち込むことも多いです。
もし、あなたが有機野菜を購入して、美味しいと思ったら生産した農家に電話や手紙で「美味しかった」と伝えてあげて下さい。
その一言で、僕ら生産者は有機農業をもっと頑張ろうと思えるのですから。
この記事であなたの探していた答えが、見つかっていれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。