アニマルウェルフェアが気になる方、安全なお肉や卵を探している方向けの記事です。
記事の前半ではアニマルの概念や、安全なお肉や卵との関係性について。
後半では、アニマルウェルフェア対応の畜産物の見分け方について解説します。
✔本記事の内容
✔記事の信頼性
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。
オーガニックと食に精通した僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。
アニマルウェルフェアを知ってる?安全な肉や卵の必須条件だよ
断言します。アニマルウェルフェアを知らずして、安全なお肉や卵を食べることはできません。
・アニマルウェルフェアとは「家畜の幸せの追求」です
簡単に言えば、アニマルウェルフェアとは、「家畜でも与える痛みやストレスなどをできる限り抑えて育てよう」という考え方です。
農林水産省(国)のWEBサイトでも、以下のように説明されています。
アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省としては、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています。
要するに、「食べちゃうのだから、動物だから、どんな劣悪な環境で飼育してもOK」ではなく、「家畜の幸せを考えた飼育をしよう!」という考え方ですね。
⇒アニマルウェルフェアはどこでいつから始まった?
アニマルウェルフェア(家畜福祉)の考え方は、1960年代のイギリスで出版された1冊の本から始まったと言われています。
自然保護や動物虐待防止活動に力を入れていた女性、ルース・ハリソンが、家畜の虐待飼育や薬剤投与による畜産物の汚染(工場式集約畜産)を批判しました。
彼女が書いた本は、「アニマル・マシーン―近代畜産にみる悲劇の主役たち」と言います。
「アニマル・マシーン」は発売と同時に大きな反響を呼び、現在のアニマルウェルフェアの取り組みを促す原動力になっています。
これを受けて英国政府は、家畜の飼育実態と福祉について調査してまとめた「ブランベル・レポート」の中で、動物福祉の原則として初となる「五つの自由」を提言しました。
以降、アニマルウェルフェアはEUを中心に世界中に広がりました。
⇒具体的には家畜の「五つの自由」を叶えてあげること
アニマルウェルフェアを語る上で重要なポイントが「五つの自由」です。
家畜の劣悪な飼育環境を改善させ、ウェルフェア(満たされて生きる状態)を確立するために、次の5項目が定められています。
1.飢えと渇きからの自由
:エサやキレイな水が、十分に与えられている必要があります
2.不快からの自由
:清潔な環境や、極度に暑かったり寒かったりするのを避ける環境が整えられている必要があります
3.痛み・傷害・病気からの自由
:病気にならないように健康管理や予防、怪我はちゃんと治療される必要があります
4.恐怖や抑圧からの自由
:精神的な苦痛や恐怖を与えるような飼育を、しないようにします
5.正常な行動を表現する自由
:自由に行動できるように十分なスペース(場所)が確保します
これを見たあなたは、「そんなの当たり前じゃん」と思いませんでしたか?
しかし、この当たり前のことを全くできていないのが日本の畜産なのです。
日本の畜産は、アニマルウェルフェアとは真逆の工場式畜産と言われていて、海外から大きく遅れをとっています。
参考:日本と海外のアニマルウェルフェアの現状【日本はかなり遅れてます】
⇒日本のアニマルウェルフェアは国の政策で葬られた
僕の祖父母世代のお肉や卵は、とても安全でした。
・餌は、私達人間が食べる野菜のくずや、稲わら等身近にあるもの
・適度な運動やストレスが少ない少数頭数飼育であったため、病気にもかからない
・そのため、家畜に対する薬剤等の投与はほとんどしない
意識しなくても、田舎の農家の多くはアニマルウェルフェア対応の農場だったのです。
ところが、高度経済成長期の1960年代に、日本政府は農業基本法という法律を制定し、機械化や規模拡大に伴う生産性の向上で農家の所得を向上させようとします。
規模の小さい昔ながらの畜産農家は次第に淘汰され、効率よく経営する規模の大きな畜産農家が増えていくことになります。
その結果、次第に日本の畜産は以下のようになっていきます。
・たくさんの家畜をぎゅうぎゅうに畜舎に詰め込む
・餌は外国からの輸入に頼る方が効率的
・成長促進剤等を投与し早く大きくし出荷する
国の政策によって生産性や効率性ばかりが重視され、いちばん大切なお肉の安全性は置き去りにされてしまったのです。
・アニマルウェルフェアと安全な肉や卵の関係
結論から言うと、アニマルウェルフェアを無視した飼育をしていると、家畜を食する人間にも影響を与えます。理由は以下のとおりです。
⇒日本の畜産は3つの密で心身ともに不健康
日本の畜産がどのような状態かは、コロナウイルスと戦った日本人であれば容易に想像がつくと思います。
日本の畜産現場は、コロナ騒動時に避けるように指示されていた「3密」状態です。
1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)
2.密集場所(多くの家畜が密集している)
3.密接場面(体の方向転換できないくらい過密な距離)
日常的にこのような環境で飼育された家畜は、免疫力も低くすぐに病気になります。
狭く身動きもとれないスペースでストレスを感じ、異常行動が起こす家畜もいます。
このように僕ら日本人が食しているお肉や卵の多くは、心身ともに不健康です。
アニマルウェルフェアの精神である、「五つの自由」の実現には程遠い状況です。
⇒不健康な家畜には薬剤投与【これは人間にも影響する】
不健康な家畜には、治療目的で抗生物質等の薬剤が使われます。
あまりにも同じ薬剤を多用し過ぎると、薬剤が効かない薬剤耐性菌が生み出されます。
実は薬剤耐性菌は、畜産物を食ベる人間にも感染します。
感染した人間は、病気になって抗生物質等の薬を使用しても効かなくなり、最悪、命を落とすことがあるのです。
国立感染症研究所によれば、日本における薬剤耐性菌の死亡者数は年間約8,000人と言われています(参考:日本における薬剤耐性菌による死亡数の推計について)。
アニマルウェルフェアを無視した飼育で、家畜の「五つの自由」を奪い、心身的に不健康にしてしまうリスクは、それを食べる人間にもあることを覚えておきましょう。
家畜の薬剤投与による人間への影響は、動画などを交えて以下の記事で解説しています。
>>気になる!お肉(家畜)に使う抗生物質の影響【薬が効かなくなるよ】
【簡単】アニマルウェルフェア対応の肉や卵の見分け方
「農場を見ることができない消費者は、アニマルウェルフェアに対応した肉や卵を見分けることができないのか?」
あなたは、こう考えたはずです。
実は、農場を見なくてもある程度、アニマルウェルフェアの畜産物を見分けることは可能です。
ポイントは3つあります。
・【ポイント1】安い価格の肉や卵は避ける
アニマルウェルフェア(家畜福祉)の基づき飼育されていたお肉の値段は、一般のお肉と比較して高くなります。
なぜなら、生産性や経済性を重視した飼育でないためです。
家畜の「五つの自由」を満たすためには、飼育密度や餌、衛生環境など一般の飼育と比較して大幅なコスト増になります。
当然、コスト増分は価格に反映されるため、一般の肉や卵の数倍の値段で売られています。
アニマルウェルフェア対応の肉や卵をお探しの方は、まず、価格を調査してみましょう。
一般より、高い価格がついていれば、「五つの自由」全てを満たさなくても、アニマルウェルフェアを意識して飼育である場合が多いです。
・【ポイント2】薬剤(抗生物質等)不使用と表記してある
アニマルウェルフェアが無視された、日本の畜産では薬に頼る飼育があたり前です。
理由は、三密状態の飼育であれば、必然的に体が弱く病気になるからです。
知らない間に食した畜産物から薬剤耐性菌に感染しないためにも、「抗生物質不使用」など、薬剤を使っていないことを強調しているものを購入しましょう。
薬剤不使用の家畜は、免疫力が高く健康であることを証明しています。
その際、先程の値段も参考になります。
「薬剤に頼らない→家畜が健康→アニマルウェルフェアの実践→コスト増」となり、店頭価格に反映されるからです。
・【ポイント3】放牧や平飼いと表記してある
「放牧」、「平飼い」、「放し飼い」などと表記されてあるお肉や卵は、「三密状態の飼育ではありません」というメッセージです。
放牧や平飼いをしている生産者から、聞いた話を以下の2本の記事でまとめています。彼らがなぜ、放牧や平飼いにこだわるのか参考になるはずです。
・平飼い卵はなぜ安全なのか?養鶏農家が語るアニマルウェルフェア
・養豚は放牧が理想!アニマルウェルフェア実践者が語る養豚の真実
放牧や平飼いのお肉や卵も、必ず一般のそれと比較して値段が高くなります。
なぜなら、一頭あたりのスペースを広く確保することや、自由に動き回るためお腹がすき、エサ代をたくさん食べるなどで生産費が上がるからです。
まとめ:消費者から声をあげていこう
日本でアニマルウェルフェアが遅れているは、全て生産者のせいなのでしょうか?
僕は違うと思います。
生産者だって、家畜の幸せを考えた飼育をしたいはずです。
それができないのは、アニマルウェルフェアを実践すると、生産コストがあがり家畜の管理が非効率になるからです。
多くの消費者は安い食材を選び、高いものは見向きもしません。
生産者は、スーパーや消費者から常に、「肉や卵、牛乳の値段を下げろ!」と圧力をかけられているのです。
なので、僕たち消費者から以下のような声をあげていきましょう。
・「多少高くても構わないので、安全なお肉や卵を育てて下さい」
・「私達はアニマルウェルフェアを考慮したお肉や卵以外は、買いたくありません」
あなたのような方が一人でも増えれば、必ず日本の畜産現場や食卓を明るくするはずです。
日本でアニマルウェルフェアを進める鍵は、消費者が握っています。
参考:アニマルウェルフェア進展の鍵は消費者【できることはエシカル消費】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。