本記事は、平飼いで卵を生産し、アニマルウェルフェアを重視している養鶏農家へのインタビュー記事です。
✔本記事のテーマ
✔本記事の内容
・平飼い卵はなぜ安全なのか?養鶏農家が語るアニマルウェルフェア |
・安全な卵のもう一つのポイント【餌が超重要です】 |
・知っておきたい安全な卵に関する豆知識 |
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。
オーガニックに精通した者が書いた記事なので、記事の信頼性は高いと思います。
この記事の目次
平飼い卵はなぜ安全なのか?養鶏農家が語るアニマルウェルフェア
2019.7.13に僕の経営するお店(やさいの庭 Chiisanate)で、平飼い養鶏農家(近藤自然農園の近藤代表)とお客様のお話会を開催しました。
以下、Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)である僕と近藤氏の対談形式で解説していきます。
・平飼い卵が安全なのは鶏の欲求を満たす飼育だから
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:今日の参加者に、「平飼い卵が安全と言われるけど本当ですか?」と質問があります。実際に平飼い卵を生産している近藤さんは、どう思いますか?
近藤自然農園(近藤氏)
:「平飼い卵は安全」は消費者の視点ですね。生産者の視点から言えば、「安全な卵を作るために平飼いをする」です。
平飼いとは、一般的なかご(ケージ)に詰め込んだ飼育ではなく、鶏が自由に地面を歩き回れるようにする飼育法です。
「かご(ケージ)飼い」では安全性の高い卵を作ることが出来ないのです。なぜなら、鶏本来の欲求を満たすことが出来ず、卵を生む鶏自体がいつも不健康(病的)だからです。
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:鶏本来の欲求とは何ですか?欲求を満たさないと、なぜ不健康になるのですか?
近藤自然農園(近藤氏)
:鶏には以下のような欲求があります。
日光浴、土遊びや土つつき、卵を巣の中で産みたい、止まり木に止まりたい、体を清潔に保ちたい・・・・・
僕ら生産者は、これらの鶏本来の持つ欲求を最大限に満たしてあげる必要があります。
この欲求を無視してかご(ケージ)に閉じ込めれば、過度なストレスを与え結果的に免疫力が低下した病的な鶏になります。
そして、それを防ぐために大量の抗生剤や殺菌剤が必要となります。
・バタリーケージ飼育はアニマルウェルフェアを無視
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:日頃、近藤さんのような平飼い卵をあまり見かけませんが、他の養鶏農家さんはどのような飼育をしているのですか?
近藤自然農園(近藤氏)
:日本の採卵鶏の9割以上は先程から話しているかご(ケージ)飼育で、専門用語でバタリーケージ飼育と言います。
狭い金網の中に鶏を詰め込み飼育する方法です(写真)。
バタリーケージ飼育は、不衛生な狭いケージの中で一生を終えていく悲惨な飼われ方です。そして、鶏本来の欲求を満たす環境が何一つありません。
家畜というより、まるで卵を産むための装置と言った方が正しいでしょう。
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:なぜ、そのような劣悪な環境で飼育する必要があるのですか?
近藤自然農園(近藤氏)
:じゃあ、こちらも質問します。「あなたはスーパーで買う卵が1パック100円そこそこで買える理由が分かりますか?」
その答えが、バタリーケージ飼育だと僕は思っています。
要は、バタリーケージで鶏をケージに詰め込んで飼育する方が生産効率が高く、生産コストも下るからです。
市場(お客様)が求めている卵は1パック100円そこそこの安い卵です。平飼いにすると、そんな値段じゃ経営的に採算が採れないのです。
日本は海外と比べて鶏の飼育環境がかなり劣悪です。実は、海外ではこのバタリーケージ飼育を既に禁止している国も数多くあります。
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海外がバタリーケージを禁止する理由は、消費者がアニマルウェルフェアを考慮した畜産物を選ぶためです。
バタリーケージはアニマルウェルフェアの精神を無視して生産された卵で、そのような卵を海外の消費者は選ばないのです。
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・飼育環境で2種類ある平飼い卵
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:ところで、近藤さんの養鶏場(下写真)を見に行ったことがあるのですが、平飼いの農家は、近藤さんのような環境で育てているのですか?
近藤自然農園(近藤氏)
:いえ。平飼いにも2種類あると思っていて、鶏舎の中で自由に動き回ることのできる平飼いと、僕のように鶏舎の外に鶏を放す平飼いです。
一般的な平飼いとは、バタリーケージを使用せず、あくまでも鶏舎の中で飼育することを前提としています。
一方、僕のように鶏舎から鶏を放して飼育する方法は、厳密言えば放牧(放し飼い)といいます。放牧(放し飼い)は相当広い面積が必要なので、必然的に生産者は平飼いの中でもかなり少なくなります。
一般消費者は、飼育方法について、下図のような概念を知っておけばいいと思います。
安全な卵のもう一つのポイント【餌が超重要です】
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:参加者から「鶏が食べる餌と卵の安全性は関係あるのか?」という質問をいただいております。
近藤自然農園(近藤氏)
:与える餌は安全性と密接に関係しています。日本の養鶏のほとんどは海外からの輸入飼料に頼っています。
飼料用として輸入されてくる雑穀などは「ポストハーベスト農薬」といって収穫された後の農薬使用がとても多いのです。
収穫された穀物の多くは長時間、船にゆられて蒸し暑く湿気の多い海を越えて日本にやってきます。
何もしなければ、輸送の途中でかびが生えたり、虫がわいたり、腐ったりします。それを防ぐために、船積のときに殺虫剤などの農薬を大量にかけるのです。
後、輸入飼料は遺伝子組み換えされているのも怖いですね。僕は、そんな輸入餌を、自分の鶏に食べさせたくありません。
Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)
:それでは、近藤さんは鶏にどのような餌を与えているのですか?
近藤自然農園(近藤氏)
:下写真のように、自分で餌を作ります。
写真は餌を作る近藤代表
地場産のくず米・ヌカ・魚のアラ・野草や雑草をふんだんに食べさせます。
確かに輸入飼料を使えば手間が省けて楽ですが、僕は輸入されてくる餌の安全性は信用していません。
卵アレルギーってよく聞きますけど、僕は2つのアレルギーがあると思います。
・1つは卵本来のタンパク質にアレルギーがある方。
・もう1つは、ポストハーベスト農薬によるアレルギーの方です。
人間が直接農薬を摂取しなくても、残留農薬の餌を食べた鶏が産む卵から間接的に体内に取り込んでしまうため、アレルギー反応が起こるのです。
現に、卵アレルギーの方が、「近藤さんの卵なら食べても大丈夫!」という方がいらっしゃいます。
恐らくこの方は、ポストハーベスト農薬によるアレルギーなのでしょうね。
知っておきたい安全な卵に関する豆知識
お話会で質疑応答に答える近藤代表
最後に、参加者からの近藤氏にあがった質問を、Q&A方式でまとめました。
A.卵の色は餌が全てです。餌に何を食べさせたかによって卵の色を調整することができます。「卵の色が濃いオレンジ=栄養価が高い」は間違いです。
卵の色が濃いオレンジになるようなものを、生産者が餌に添加しているのです。
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A.有精卵と無精卵に違いは「命があるかないかの違いです」。有精卵は、雄鶏と一緒に飼育している農場で受精した卵なので、温めるとヒヨコが産まれます。
一方、無精卵は、受精した卵ではないので温めてもヒヨコにはなりません(農場には雄鶏がいません)。
卵を産まない雄と一緒に飼育すると、エサ代等経費が高くなります。
このため、安さ重視のスーパー等に並ぶ多くの卵は無精卵です。あなたはが食べている卵は命ある卵ですか?それとも命のない玉子ですか?
A.これも鶏が食べた餌の問題です。例えば餌に、魚粉のようなものを大量に与えると魚の生臭さのような風味が卵に残ります。
動物性の餌より、雑草や牧草や米などの植物性の餌を多く与えた鶏の卵からは、生臭さを感じることはないはずです。
まとめ
実際に、平飼い農家の話を聞いて、あなたの疑問や悩みが少しでも解決できたなら嬉しいです。
食卓と農の現場が離れ過ぎて見えなくなった今だからこそ、生産者と一緒に話し合うことは大事なのかもしれませね。
最後までお読みいただきありがとうございました。