養豚は放牧が理想!アニマルウェルフェア実践者が語る養豚の真実

豚(養豚)の、放牧やアニマルウェルフェアについて知りたい方向けの記事です。

✔本記事のテーマ

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✔本記事の内容

・アニマルウェルフェア実践者が語る養豚の真実

アニマルウェルフェア実践者が語る養豚の真実

・東京五輪対応の形だけのアニマルウェルフェア

東京五輪対応の形だけのアニマルウェルフェア

・椎葉放牧豚で日本一、幸せな豚の生産を目指す熱い若者

椎葉放牧豚で日本一、幸せな豚の生産を目指す熱い若者

この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しています。

オーガニックと食に精通した僕が書く記事なので、記事の信頼性は高いと思います。

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アニマルウェルフェア実践者が語る養豚の真実

2019.10.5に僕の経営するお店で、養豚農家とお客様のお話会を開催しました。養豚農家は全国でも珍しい豚の放牧を行っている、Mutsumi農場の増田さんです。

以下、Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)である僕と、Mutsumi農場の増田さんの対談形式で解説していきます。

・アニマルウェルフェアの概念がない日本の養豚経営

Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:日本の畜産は、生産性や効率性を重視する工場型畜産で、家畜は「生き物」ではなく「モノ」として扱われると僕は思っています。養豚の現場では実際どうなのですか?

Mutsumi農場(増田氏)

:今、私は宮崎県椎葉村の山奥で豚の放牧を行っていますが、放牧を始める前は別の養豚会社で働いていました。そこでは、豚を蹴ったり叩いたりして狭い畜舎の中で人間に従わせようとします。

養豚現場では、数千頭以上の出荷まで辿り着けない命を、目の当たりにしました。劣悪な飼育環境による病死や事故死、中には人間の手で生きている豚を殺めることもあります。

Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:日本ではアニマルウェルフェア(家畜にも生き物としての尊厳を重視して、ストレスなく健全な飼育をすること)が配慮されていないと聞きます。増田さんが今話した状況を、畜産現場で働く方はどう思っているのですか?

Mutsumi農場(増田氏)

:仕事として割り切っている感がありますね。人間誰でもそうだと思うのですが、毎日そのような環境で働いていると、恐ろしいことに特に何も感じなくなるのです。

アニマルウェルフェアの精神には、以下の5つの自由があります。

1.空腹と渇きからの自由

2.不快からの自由

3.痛みや傷、病気からの自由

4.正常な行動を発現する自由

5.恐怖や苦悩からの自由

 

生産性や効率性を重視する養豚業界の常識では、これらを満たすことは難しいのです。なぜなら、これらを実践すると利益が出なくなるからです。

 

消費者は価格に敏感に反応します。結局、利益を残すためには価格を上げるしかないのですが、そうすれば、消費者は離れてしまいます。

なので現場には、アニマルウェルフェアのことは頭にありますが、それを実践しようとは誰も思いません。

 

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・養豚は放牧が理想!山にこもり放牧を始めた理由

Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:増田さんは、今、自分で椎葉放牧豚というブランドを立ち上げ養豚をしています。なぜ、勤めていた養豚会社を辞めたのですか?放牧という全国でも珍しいスタイルの経営をしていることと併せて教えて下さい。

 

Mutsumi農場(増田氏)

:先程、「そのような環境で働くと慣れて何も思わなくなる」と言いました。でも私は慣れなかったのです。

狭い部屋にぎゅうぎゅうに詰め込まれた豚は、ストレスがたまり異常行動が始まったり病気にかかったりします。

 

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このため、常に抗生剤や添加物等に頼らざるを得ない状況になってしまいます。ご存知のとおり、これらの使用は薬剤耐性菌のリスクや薬剤残留に伴う危険性があります。

 

注射は豚でも痛いので幾度も注射を打つと、人間不信に陥り近寄らなくなりますね。人間に服従させるために蹴ったり叩いたりすること、生きている豚を人間の都合で殺めること・・・・

これらは、私には到底我慢できるものではありませんでした。

 

放牧を始めたきっかけは、このような環境と正反対の養豚をしたかったからです。

豚に自由に動き回る空間を与え、自然な環境でのびのびと育てるには放牧が一番だと思ったのです。

放牧でストレスをかけず病気にも強い健康な豚なら、抗生剤等の薬剤も必要ないですからね。

 

Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:実際に放牧をしてみて、豚は抗生剤等の薬剤使用はなくなったのですか?

Mutsumi農場(増田氏)

:はい、なくなりました。大自然の中でストレスなく自由に行動できる環境では、豚が病気にならないことが証明できたと思います。私は、放牧を初めてから抗生剤等の薬剤を豚に使用したことはありません。

 

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家畜に抗生物質等の薬剤を投与すると、人間に影響を及ぼします。以下の記事で、家畜の抗生物質投与と人間への影響をまとめています。

 

 

・超非効率でコスト高がアニマルウェルフェアの進まない理由

Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:養豚のプロ、そして実際にアニマルウェルフェアを実践している増田さんから見て、日本でアニマルウェルフェアが進まない理由は何だと思いますか?

 

Mutsumi農場(増田氏)

:超非効率で生産コストが大幅に上がることだと思っています。私の放牧経営を例に上げて話します。

例えば、出荷のための豚の追い込み作業は、一般の養豚と比較して超非効率です。

 

放牧は山の中を歩き回っていますので、出荷の際に豚を探し出し、1頭ずつ所定の荷台に追い込んで載せる必要があるのです。

この追い込み作業にかなり時間がかかります。畜舎に押し込めて飼育していればこんな苦労はなでしょう(笑)

 

また、放牧では豚が自由に動き回れるためお腹がすきます。なので、畜舎で買われている豚よりたくさんの飼料を食べます。そのため、エサ代はとても高くなりますね。

 

狭い畜舎に豚を詰め込むのは、動かないようにして豚を肥満にするのも理由の一つです。豚を動かないようにすれば、カロリー消費が少なくエサ代が少なくて済みますからね。

東京五輪対応の形だけのアニマルウェルフェア

Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:主要先進国の中でも日本の家畜の飼育環境は劣悪で、2020年の東京オリンピックでも諸外国から日本の畜産のあり方の改善を求められています。

要するに、世界の有名選手たちが日本の畜産物を「食べたくない」と拒否しているのです。

この件について、増田さんはどのようにお考えですか?

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Mutsumi農場(増田氏)

:東京五輪のアニマルウェルフェア問題は、私も話は聞いています。私の場合は養豚農家なので鶏や牛のことはあまり分かりませんが、養豚に限って言えば今まで話した通りです。

恐らく、日本のほとんどの養豚農家は、アニマルウェルフェアを無視した経営をしています。

アニマルウェルフェア先進国のEUからすれば、日本の取組みは相当遅れていると言ってよいでしょう。

実はこの問題、表面上のアニマルウェルフェアで体裁を整える生産者もいるようです。

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Blog管理人(やさいの庭 Chiisnate)

:表面上のアニマルウェルフェアとは何ですか?

Mutsumi農場(増田氏)

:東京五輪の食材に自社農場の畜産物を取り扱ってもらうために、試験的に一部の農場だけアニマルウェルフェア対応にするといった行為です。

例えば1,000頭規模の飼育のうちわずか数十頭を放牧にして、「我社はアニマルウェルフェアに取組んでいます」とかがその典型です。

要するに、東京五輪のためのアニマルウェルフェアで、アニマルウェルフェアの本質を全く理解していないのです。

そのような養豚会社は、東京五輪が終わると同時にアニマルウェルフェアも終わるのでしょうね。

椎葉放牧豚で日本一、幸せな豚の生産を目指す熱い若者

いかかでしたか?今日は、養豚でアニマルウェルフェアを実践しているMutsumi農場の増田さんのお話でした。

全国でも珍しい豚の放牧を行っている彼は、2020年3月時点現在で33歳という異例の若さです。

 

お店(やさいの庭 Chiisanate)で使用する豚肉はオープン以来、ずっと彼が育てた椎葉放牧豚を使っています。

僕が彼から豚肉を買う理由は、値段でもなく、ブランドや知名度でもなく、彼の考え方に共感できるからです。

 

結局僕は、お肉ではなく彼の養豚や安全性にかける情熱を買っています(もちろん味も最高級ですが)。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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