✓本記事の想定読者
記事ではこのような疑問を抱え、有機野菜の安全性について調べている方向けの記事です。
✓本記事の概要
この記事には、以下のようなことが書いてあります。
✔記事の信頼性
この記事を書いている僕は、オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営している有機JAS認証農家です。
実際に有機農業をしている僕が書く記事なので、信頼性は高いと思います。
この記事の目次
【問題あり】有機野菜は肥料で危険になる!
有機肥料はクリーンなイメージで、土にも野菜にも優しい気がしますが、実際は問題も多い肥料でもあります。
・有機(JAS)野菜の肥料の考え方
この記事でお話する有機野菜は、正規の有機JAS認証野菜のことです。
有機野菜と無農薬野菜の違いが分からない方は、以下の記事を読んで戻ってくれば理解が深まるでしょう。
>>有機野菜と無農薬野菜の違い【ずばり法律に監視されるか否かです】
⇒有機JASでは原則肥料を使用できない
有機JAS制度は基本的に農地の外部から、肥料を持ってきて(購入して)農地に投入することを原則認めていません。
「自分の畑からでた農産物の残渣や、畑にいるミミズや微生物で土を肥やしていきましょう」という考えが原則です。
⇒条件付きで認められる有機肥料
ただし、これだけでは農産物の成長が悪いことがあります。
そんなときは、JASで定める肥料なら使っていいことになっています。
有機JASで認められる肥料は、以下のような条件があります。
・化学物質が添加されていない(化学的に合成されていない)こと
・原材料の生産段階において組換えDNA技術が用いられていないこと
何だか安全そうな気がしませんか?今日、僕が記事で話す内容は、もっと深いところです。
・問題点は有機質肥料の質と量【低質な有機肥料を大量に使う弊害】
僕が前段で有機JASの肥料の考え方を話した理由は、JAS制度には自己矛盾があるからです。
つまり、遺伝子組み換えや化学物質が添加された肥料を禁止しておきながら、実際には認めています。
⇒有機質肥料の質【動物性の肥料が危ない】
よく問題視されるのが動物性の堆肥です。
家畜の糞や尿を発酵させてから堆肥にする、立派な有機質肥料で循環型農業として一見、素晴らしく思えます。
しかしそこには、2つのリスクがあると僕は思っています。
<リスク1:遺伝組み換え>
日本は牛や豚、鶏の餌の約9割が海外からの輸入に頼っています。
しかし、そのほとんどは遺伝子組み換え作物です。
<リスク2:化学物質(薬剤も含む)>
日本に輸送中に腐ったり虫食いに遭ったりしないように、化学的な薬剤処理をされているものもあります。
また、病気予防や治療のために、大量に薬剤を家畜の体内に流し込みます。
その餌を食べたり、薬が投与されたりした家畜の糞や尿を堆肥化しているのです。
なので、堆肥を通して間接的に、遺伝子組み換え技術や化学物質を農地に散布していることになります。
このように、日本の有機JASは、化学物質や遺伝子組み換えを禁止しておきながら、堆肥によって農地に間接的に投入されるそれらについては、禁止していない矛盾を抱えているのです
⇒有機質肥料の量【大量散布で有害物質が野菜に蓄積】
そして、このような堆肥をどれだけ農地に散布しても規制がありません。
このため、有機栽培をしている畑であっても、遺伝子組み換えや化学物質を含む残渣で土は確実に傷んでいます。
さらに、野菜本来が望まない過剰な養分を吸収するため、使えきれないものは硝酸態窒素(硝酸塩)として野菜体内に蓄積されます。
硝酸態窒素(硝酸塩)は有害物質であるため、野菜に蓄積されると人間にも影響を及ぼします。
参考:有機野菜=安全は嘘!【農家の本音】野菜は色が薄くて小さい方を選べ
・【参考】EUの有機野菜は肥料にも厳しい
海外の有機(オーガニック)認証ではこの辺り、どうなっているのでしょう。
「化学肥料や化学農薬を使用しない」ことは世界の共通になっているようですが、細かなところに違いがあります。
オーガニック認証の基準が厳しいと言われるEUでは、以下のようになっています。
✓動物性肥料について農地に投入する量の上限を定めている
✓遺伝子組換え作物を食べた家畜の堆肥を禁止(家畜の堆肥を使う場合は、遺伝子組み換えの餌を食べていない等の証明書が必要)
✓アニマルウェルフェアに配慮して飼育した動物性堆肥でなければならない
※最後のアニマルウェルフェアについて、言葉の意味が分からない方は以下の記事をご覧ください。
>>アニマルウェルフェアを知ってる?安全な肉や卵の必須条件だよ
知り合いの有機JAS認証農家は、EUに向けて農産物を輸出しています。
その方曰く、「日本の有機JAS認証はEUに比べるとかなり甘い」と言っています。
要するに、日本の家畜の堆肥では、EUのオーガニック認証に通用しないことになります。
【結論】有機野菜に肥料はいらない!これが最も安全な野菜
自分が有機農業をしているからこそ、分かることですが、結局、野菜は人間が何も手を加えない方が美味しく安全です。
・早く出荷して次の野菜を植えたい
・大きく立派な野菜にして消費者に選んでもらいたい
この様な農家の欲が、野菜を不味く危険なものにします。
・有機農業の原則どおりに作られた野菜が安全で美味い
有機JASでは、確かに認められた肥料を使うことはできます。しかし、原則は以下のようになっています。
・ほ場で生産された農産物の残さに由来する堆肥の施用
・ミミズや昆虫、微生物による有機物の分解などによる土壌の改善
要するに、購入した肥料を畑で使用しないことが原則になっています。
これは理にかなっていると思いませんか?
肥料を購入しなければ、この記事で私が取り上げた、有機肥料の質と量の問題を同時に解決することができます。
✓残さを使って自分で作る堆肥には限りがあるので、過剰に使用することができません(量の問題の解決)
✓牛・豚・鶏の動物由来の、内容が危険な堆肥も使用できません(質の問題の解決)
これを実践した有機野菜が、最も安全で美味しいと僕は経験上思います。
・有機肥料より化学肥料の方が「安全」と思うことがある
僕は、「化学肥料を使う方が安全ではないか?」と思うことがあります。
有機肥料は、化学肥料とは違い土壌微生物に分解されて初めて吸収が可能な状態になります。
つまり、有機肥料は畑に散布されてから分解の時間がかかるため、長く畑の中にとどまるのです。
一方、化学肥料は水に溶ければ吸収可能な状態になります。つまり、畑に散布してもすぐに効き土中に長くとどまることがないのです。
要するに、劣悪な堆肥を使うと、有機JASに反して遺伝子組み換えや化学物質が土中に長く残存してしまいます。
化学肥料と有機肥料の違いは、以下の記事で詳細に解説しています。
>>【有機農家の忠告】化学肥料の3つの害:僕は怖くなり使用を止めた
まとめ:野菜が何を食べてきたか【人間と同じだね】
肥料は野菜にとって、成長するために必要なご飯です。
人間と同じで、野菜も食べたもの(=肥料)から作られます。
世間で「有機野菜は安全」と思われていますが、有機野菜だから安全ではありません。
記事で解説したように、有機農業の原則を守って外部から購入肥料を入れない有機野菜が安全なのです。
畑の土の力だけで育った野菜、絶対、美味しくて安全に決まっています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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