有機野菜は意味がない説は一理あり!オーガニックは基準さえ守ればOK?

・野菜はどれを食べても同じ。有機野菜ってただ高いだけ。

・しかも、一般の野菜と同様に農薬も使えて安全性にも問題があるらしい

・これだから有機野菜は意味がないと思う

多くの方がこのようなことを感じ、有機野菜を敬遠するようです。

確かにこれは一理あるかなぁ~。

この記事を書く僕も有機野菜を作っているし、有機JASの検査官としてほ場の検査をするけど、「有機野菜は意味ないかも・・」と思うことが多々あります

そこで本記事では、有機農業に精通している僕が、「有機野菜は意味がない説」について実体験を基に深堀りします

この記事を読めば、真の有機(=オーガニック)野菜が市場経済の中で広がっていく難しさを感じるでしょう。

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有機野菜は意味がない説は一理ある

先日、僕は以下のようなツイートをしました。

結論から先に書くと、基準だけを守っている今の日本において、オーガニックは意味がないと思っています。

つまり、安全性をだけ求めて有機野菜を購入すること自体、意味がないと思うわけです

・【有機JASの違和感】僕が有機野菜は意味がないと思う理由

僕は、有機JAS認証を取得した農家で、有機JASの検査官もしています。

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そんな僕が、周りの有機農家と話したり検査官として有機農家と接したりする中で、明らかにオーガニックの本質から外れている方を見かける機会があります

⇒有機農業の現場は基準の罠にハマっている

国としてオーガニック製品にお墨付きを与える有機JAS認証制度

認証取得は非常に難易度が高く、日本全体の耕地面積に占める有機農業取り組み面積はわずか0.2%です。

下図の通り、先進国の中でも最下位ですね。

出典:有機農業をめぐる事情(農林水産省)

ちなみに、日本でオーガニックが普及しない理由を以下の記事で解説しています。

>>なぜ日本はオーガニック後進国なのか?【3つの理由を体験から語る】

難易度が高い理由は有機JASには数え切れない基準や規格があり、それらを遵守する義務があるからです。

JAS法には罰則規定も定められており、違反すると法に基づき処罰されることもあります。

しかし残念なことに、「JASの基準さえ守っていればOK」という農家が多いですね。

・もはや慣行に近い!大型機械や農薬

大型トラクターに肥料や農薬。

検査官として有機農家のほ場に行くと、一般の農家と大して変わらない有機JAS認証農家をよく見かけます

僕自身大型機械を使用せず、肥料は手作りで農薬は使用しないので、当初はこのギャップに驚いたものです。

⇒【厄介】有機野菜にも認められる農薬

ぶっちゃけ、日本のオーガニック制度(有機JAS)は農薬の使用を条件付きで認めています

つまり、作っている農産物が病害虫の被害に遭いヤバい状態で、努力しても効果がない場合にだけ、JASで認めた農薬は使用してもOKなのです。

※JASで認める農薬は別表2農薬といいますので気になる方はポチってリストを御覧ください。

・マシン油乳

・防虫菊乳剤

・銅水和剤

・スピノサイド水和剤

これは、先日、僕がJASの検査で農家のほ場に行った時に使われていた農薬です

あなたに覚えておいて欲しいのは、オーガニックマークが付いた正規の有機野菜にも、このような農薬使用の可能性があるということです。

※有機野菜は「無農薬」と勘違いしている消費者がいますが、それは間違いです。

「JASで認められているから農薬だから使っても大丈夫」

このように思っている有機認証農家が、現場に結構いたりします。

⇒大型機械が生態系を乱す

大型機械も同様に、有機農家といっても小さい面積で機械を使わず細々と農業している方は非常に少ないですね。

例えば、大型トラクターで畑を掻き回し、生物層を破壊しミミズをぶった切ったりしています。

大型機械に過度に土が踏み固められたり、燃料を過度に使うなどいいことなしですね。

オーガニックとは程遠いと言えます。

経済活動とオーガニックの両立は難しい

それでは、オーガニックとは何なのか?

多くの有機農家が「基準(JAS法)を守ることだけ」を想定していますが、正直、ちょっと違いますね。

なぜなら、日本の有機JAS制度は元をたどると、国際有機農業連盟(IFOM)の基準を参考に制定されているからです。

・オーガニックの本質はもっと別にある

国際有機農業連盟(IFOM)が考えるオーガニックとは、①生態系、②健康、③公正、④配慮の4つの原則があり単に基準を守るだけではありません

このあたりの詳細は解説すると長くなるので、別記事にまとめています。

>>【意味は深い】オーガニックとは簡単に言うと「幸せになる仕組み」

確かに、この原則を考えて有機農業をしている認証農家もいます。

ですが、僕の知る限りほんの一握りの農家ですね。

つまり、こんなことを考えて日々、有機農業をしている余裕が有機農家にはないということです。

結局、JASの基準を守って有機農業をやるのに精一杯なのです

・オーガニックは市場経済に魂を売った

僕がこんなネガティブ発言をする根拠は、他にもあります。

実は、オーガニックの意味がなくなっているのは、日本だけではないんですよね。

今、世界中でオーガニックは市場経済の喰い物にされています

「オーガニックは市場経済に魂を売った」とも言われていますね。

結論から先に言うと、真面目にオーガニックに取り組む規模の小さな農家や企業は潰れていきます

一方、オーガニックを食い物にした一部の企業のみが栄えるという悲しい現実があります。

⇒海外では本物の有機農家は淘汰される

海外ではかつて家族経営のような小さな規模で成り立っていたオーガニック市場が、次第に消滅しています。

大手小売業者等が、このような零細オーガニック経営に価格を下げるように圧力をかけるようになったのです。

こうなると、零細農家は生産効率が低いため生き残りが難しくなります。

その結果、有機農業を辞めるか、規模を拡大した大規模オーガニック農家になるしか選択は残されていません。

しかし、小さい規模で大型機械などを使う必要がなかった有機農家が、規模拡大に対応するのは現実的に難しいですよ。

結局は、元々の大規模農家が基準を守るだけの有機農業で生き残るのです。

⇒偽物オーガニックが招く価格破壊という悲劇

ぶっちゃけ、価格が高いと言われているオーガニック製品も最近は価格破壊が起きています。

なぜなら、中国など人件費が安い国で基準だけ守った大規模オーガニック農場から輸入されるからです。

こんなことされると、自国のオーガニック農家は苦しいですよね。

追い打ちをかけるように、大手スーパーなどのバイヤーは、採算が取れないレベルまでオーガニック製品の価格を下げて納入するように、生産者やメーカーに強く要求するわけです。

オーガニック製品を扱う企業が、オーガニックの4つの原則の理解が欠けているため、自社利益のみを追求する自己中心的なオーガニックになっています

【半農半X】だから僕は有機野菜の発送だけで生活しない

こんなことを書いている、僕自身も「このままでは、市場経済にオーガニックを魂を売ってしまう」と思ったことは多々あります。

有機野菜セットを全国に発送しているのですが、ありがたい事にお客様が増えてくると欲がでてくるのですよね。

・より早く野菜を大きくしたい

・より広い面積でたくさん野菜を作りたい

・より綺麗で虫食いのない野菜を作りたい

などなど・・お客様が増えれば増えるほど、有機農業の本質から離れていくことに気付いたのです。

だからもう、たくさんのお客様を集めるのは、とっくの昔に辞めましたw

「自分の余力のある範囲で、お客様を集めればいい」といった感じです。

冒頭のツイートでつぶやいた半農半Xとは、半分農業で生活して残り半分のXは自分の得意なことや好きなことで収入を得て生きていくということです。

こうすれば、オーガニックの本質を大事にしながら無理なく有機野菜を作って生活していけると思ったんですよね。

今日の話は、これでオシマイ^^

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