
オーガニックレストラン「やさいの庭 Chiisanate」を経営しているyoshikiです。
この記事は、国産若鶏やブロイラーについて調べている方向けです。
記事では、以下のような疑問に答えます。
実は、多くの国産若鶏は、ブロイラーと言って生産性の向上や生産コストを下げるために人間が品種改良で作り出した鶏です。
■記事を読んで理解できる事■
★なぜ、ブロイラーが人間の手により生み出されたのか
★国産若鶏と呼ばれるブロイラーが、生産現場ではどのような状況なのか
安い食品には必ず理由があります。
国産若鶏がお手頃価格で誰でも気軽に買えるのは、そのような鶏を人間自らが生み出したからです。記事では以下の構成でこれらを深く掘り下げて解説します。
✔本記事の内容
それでは早速、今日のお話を進めていきましょう。
この記事の目次
国産若鶏とはブロイラー?

国産若鶏=ブロイラーと思っていいです。
呼び名のとおり、国内で生産された若鶏なのですが、若鶏とは生後3ケ月以内でお肉としてスーパーに並ぶ鶏の総称です。
ここが大事なところですが、最近の国産若鶏は生後わずか50日程度で出荷できるサイズになります。
卵から孵った雛が、わずか50日で出荷できる大きさになることに違和感はありませんか?
この違和感を実現しているのが、「ブロイラー」と呼ばれる品種群です。
ピントこないあなたのために、少しだけ鶏の豆知識を。
古くから日本に在来している鶏の多くが、出荷できるサイズになる期間は100日以上です。
国産若鶏と呼ばれるブロイラーが約50日なので、いかに早く大きく成長するかが理解できると思います。
人間の都合で改良されたブロイラー

鶏肉生産農家は、コストを抑えてうまいお肉を生産することが至上命題です。
コストを抑えるためには、人件費や電動光熱費の削減など様々ですが、飼育する鶏を人間の都合に合わせるのがもっとも簡単です。
生産者が望む鶏がブロイラー
鶏肉生産者は、
鶏がより早く成長し出荷できれば、エサ代を大幅に削減することができます。
ブロイラーの生産コストの約70%程度が、エサ代だったと思います。
早く出荷できればその分、余計なエサ代がかからないのです。
そして、胸肉など必要な部位が大きくなれば、1頭からとれる肉の量が増えるため量産が可能です。
その分餌を食べすぎては意味がありません。
少量のエサでも効率よく筋肉に変換できるように、消化・吸収もよくする必要があります。
このような夢のような話を、品種改良という手法で実現したのがブロイラーです。
そう、鶏の成長に及ぶ様々な要素を、人間が改良して作り出された鶏です。
消費者が望む鶏がブロイラー
ところで、ブロイラーという夢のような鶏を生産するようになって、鶏肉生産者は大儲け出来るようになったと思いますか?
私の知る限り、それほど儲けはないと思います。
というか、ブロイラーのような効率的で生産性の高い鶏を飼育しないと、多くの養鶏農家は生き残れないのです。
理由は、市場が求めている大量生産と徹底した安さ。
スーパーが生産者に「もっと安くならないか」と圧力をかけて買い叩きます。
お店に並ぶ安いお肉を、私達消費者が喜んで買います。
これが市場の求めるお肉で、この市場の要望を満たすには、ブロイラーを生産するのが一番理にかなっているのです。
この理由で、日本で流通する鶏肉の9割以上はブロイラーだと言われています。
改良されたブロイラーの副作用

人間の都合で改良して、短期間で胸肉が異常に発達したブロイラーに、副作用はないのでしょうか?
残念ながら副作用はあります。
この記事のタイトル「ブロイラーとはかわいそうな鶏か?」は、今から書くようなことが、私の中から離れないために付けたものです。
ブロイラーは、あまりに早く胸肉の筋肉が発達するため、残りの組織形成が追いつきません。
短期間で急成長するように人間手で改良されているので、腰や膝の骨格が身体を支えることができなくなり、歩行困難に陥る鶏も多いとか。
ブリストル大学という海外の大学が行った調査では、商業用のブロイラーの四羽に一羽は足が不自由な上、大きな胸筋が心臓の負担になって心臓麻痺などで若死にしているそうです。
健康な鶏でも通常の鶏のように、性的成熟を迎える月齢まで生き延びる鶏は皆無と言われています。
ブロイラーは通常50日程度で屠畜されてしまうため、長生きする必要はないと言えばそれまでですが、やはり考えさせられます。
銘柄鶏の多くはブロイラー

スーパーに並ぶ鶏肉には、国産若鶏の他にも「●●鶏」といった、生産者や地域の名称が入ったお肉があることをご存知でしょうか?
このお肉を一般的に、銘柄鶏と呼んでいますが、地鶏のように定義があるわけではありません。
銘柄鶏の9割以上はブロイラー
実は、この銘柄鶏の9割以上がブロイラーを使っていると言われています。
下画像の43%の部分に該当します。
※一般の国産若鶏(ブロイラー)と合わせると、日本で流通している鶏肉の実に100%近くがブロイラーなのです。
価格は一般の国産若鶏(ブロイラー)より少々高めですが、一般的な国産若鶏(ブロイラー)と基本的に同じ鶏になります。
一体、この価格差は何かと思いますか?

国内鶏肉の流通割合:「一般社団法人 日本食鳥協会資料」より管理人が作成したもの
国産若鶏(ブロイラー)とブロイラー系銘柄鶏の違い
その多くは、以下のような生産者のこだわりの差です。
など、通常のブロイラー生産者よりも一手間以上かけた飼育を行っています。
だから、同じブロイラーでも、国産若鶏よりも若干値段が高くなるのです。
しかし、銘柄鶏で長期飼育や抗生物質不使用と謳っておきながら、異常な速度で成長するブロイラーであることには間違いありません。
赤鶏の胸肉と比較して驚愕した私

私がこのブロイラー問題に気付いたのは、以前、お店で●●鶏といった銘柄鶏(ブロイラー)を使っていたからです。
オーガニックレストランと名乗っている以上、薬を投与しない等こだわったお肉をお客様に提供したかったからです。
ある日、田舎道をドライブして寄った直売所に、ブロイラーでなく赤鶏のお肉(胸肉)を見つけました。
いつも見ているブロイラーの胸肉より、かなり小さく驚きました。
時間をかけてゆっくり育つ赤鶏と、急激に育つブロイラーの胸肉の大きさは並べてみると比較になりませんでした(あまりの違いに気味が悪くなりました)。
衝撃を受けた私は、お店でブロイラーを使うのを辞め赤鶏を使うようにしました。
まとめ
ブロイラーをお店で使うのを辞めて赤鶏に代えてから、原価が上がりました。
やはりコスト的には低価格で大量の胸肉を使えるブロイラーは、家庭だけでなく飲食店としても魅力です。
でも、私は、ブロイラーについてこれまで書いてきた事実を知ってしまいました。
いくら利益がでるからと言って、異常な速さで成長するブロイラーを使い続けることが感情的にできなかったのです。
人間の欲望によって品種改良されたブロイラーを選ぶことは、鶏自身が望まない急成長で様々な病気で苦しむことになります。
これは、アニマルウェルフェア(家畜福祉)の観点からも、正しいことではないと思ったのです。
アニマルウェルフェアについては、別記事で詳細に解説しています。
⇒⇒求められる家畜のアニマルウェルフェア!家畜の5つの自由を叶えよう
私は「ブロイラーを選んじゃいけない」と言っている訳ではありません。ブロイラーは、低価格で良質なお肉を消費者に提供してくれます。
ただ、国産若鶏がなぜこんなに安くで手に入るのかを、あなたに伝えたかっただけです。
どのお肉を選ぶのかは、あなた次第です。
最後までお読みいただきありがとうございました。