・なぜ、宮崎県では口蹄疫や鳥インフルエンザが頻繁に発生するのかな?
・鳥インフルエンザが発生する本当の理由は何だろう?
2020年12月、またもや宮崎県から鳥インフルエンザの発生が確認されました。
実は僕、約10年以上前に宮崎県で発生した鳥インフルエンザでは、防護服を着て畜舎の消毒清掃作業に入った経験があります。
この記事では、そのときの経験からメディアが全く報じない、本当の鳥インフルエンザの原因について解説したいと思います。
記事を読めば、宮崎県にとどまらず、日本の畜産が如何に伝染病に弱い飼育方法をしているかが理解できるでしょう。
そして、鳥インフルエンザの蔓延は、私たち消費者も関係していることが分かるはずです。
宮崎県の鳥インフルエンザの発生から考える家畜伝染病の真の原因
宮崎県で鳥インフルエンザや口蹄疫が流行する度に胸が痛くなると同時に、「恐らく、一時の封じ込めには成功しても、数年後また流行するだろうな」と冷めた目で見る自分がいます。
今回、宮崎県で発生した鳥インフルエンザについて、行政もメディアも感染拡大の本当の原因を話そうとしません。
なので、僕が知っている情報をすべてこの記事で公開します。
・【僕は防護服を着て目にした】過去の宮崎県の鳥インフルエンザの現場
宮崎県でも鳥インフルエンザ、約4万羽のニワトリを処分へ 半径10キロ以内にはおよそ78万羽 https://t.co/BCx8qcSG5s pic.twitter.com/GhS3MhA2Ru
— 情報速報ドットコム (@jyouhoucom) December 2, 2020
ツイートの画像で白い防護服を着た人間が、殺処分や畜舎の消毒を行っています。
実は、10年以上前の鳥インフルエンザが宮崎県で大流行したとき、僕自身もこの防護服を着て畜舎の中で清掃活動を行っていました。
当時は国家公務員として働いていたので、協力要請に従い興味本位で「行きます」と手を挙げたのです。
⇒喚起が悪く、薄暗く、狭い場所で作業者の気は滅入った
僕が派遣された場所は、宮崎市周辺の養鶏場でした(場所や農場名は伏せさせて下さい)。
養鶏場に入った僕は、とにかく衝撃の連続でしたね。
✓農場の脇にはガスで窒息死させられた大量のブロイラーが山のように積み重なっていた
✓飼育されている現場は、喚起が悪く、不気味に薄暗く、圧迫感のある狭い場所
✓防護服を着た職員が、言葉も交わさずに狭い空間で淡々と作業
当時の状況が分かる写真を、自衛隊さんからお借りします。
とにかく、早くこの現場から逃げ出したい・・・不謹慎ながら本当に僕はそんな気持ちで畜舎の消毒作業を行っていました。
⇒感染経路のみ騒ぐ日本の行政やメディアはおかしい
結論から言えば、鳥インフルエンザのような家畜伝染病の多くは、動物本来の欲求に制限をかけ生産性を重視する飼育環境にあります。
その中でも、ポイントは狭い場所に家畜を詰め込む過密飼育ですね。
ところが、日本の行政やメディアは感染経路や発生場所、殺処分数などばかりに目がいき、真実を話そうとしません。
メディアは日本の畜産物がどのように生産されているのか知らないのでしょう。取材力に問題ありですね。
後に話しますが、行政は真実を知っていて敢えて話していない感ありです。
なので、鳥インフルエンザの抜本的な対策としては至って簡単で、飼育現場に家畜が快適に過ごすことのできる環境を整えてあげるだけでいいのです。
・論文から読み解く宮崎県の鳥インフルエンザの真の原因
「それはテメェーの持論だろ」と、畜産関係者がこの記事を見れば怒るかもしれませんね。
でも、今回鳥インフルエンザが発生した発生した宮崎県にある宮崎大学農学部の長谷川信美 先生も、論文「アニマルウェルフェアから宮崎県での口蹄疫発生を考える」の中で僕と同様のことを指摘しています。
ちなみに、この論文のキーワードも、宮崎県、過密飼育、口蹄疫、アニマルウエルフェアです。
⇒宮崎県のブロイラー飼育頭数は日本一で、飼育密度もトップクラス
宮崎県が公表した資料では、平成31年2月時点でブロイラーの生産頭数は全国1位です。
出典:宮崎の畜産2020
今回、発生した鳥インフルエンザではブロイラーの感染が判明しています。
度々、宮崎県で発生する鳥インフルエンザと全国1位の生産頭数であることは関係がありそうですね。
そこで先ほどの論文を読み込むと、「畜産産出額全国上位5県の家畜飼育密度」という表がでてきます。
読みやすいように、若干、僕が加工したものを下に掲載しますね。
<<畜産産出額全国上位5県の家畜飼育密度(H22)>>
出典:アニマルウェルフェアから宮崎県での口蹄疫発生を考えるから管理人がアレンジ
平成22年のデータですが、驚くことに宮崎県のブロイラー(肉用若鳥)は、鹿児島県に次いで全国2位の飼育密度(過密飼育)なんですね。
そういえば、お隣鹿児島県でも鳥インフルエンザがよく発生します。
肉用牛も鹿児島県に次いで全国3位の過密飼育です。
⇒人間が3密を避ける理由はなぜか?これが鳥インフルエンザの感染拡大の理由
最近でこそ、「コロナで3密を避ける」のは人間の間でも常識になりましたよね。
密閉、密集、密接を避けてウイルス感染を防ぎましょうということです。
しかし宮崎県の、いや日本の畜産現場を超える三密状態がヤバい場所はないでしょう。
冒頭で僕は、「喚起が悪く、薄暗く、狭い場所で作業者の気は滅入った」と書きましたが、あの場所こそ三密状態だったと思います。
長谷川先生の論文の冒頭にも、国がその事実を知っている旨の記述があるので抜粋しておきますね。
農林水産省の口蹄疫対策検証委員会は平成 22年 11月に出された報告書(口蹄疫対策検証委員会 20lO)で,今回の拡大の背景には,戦後一貫して進められてきた輸入飼料に依存した規模拡大政策があり,農場の大規模化とともに,狭い範囲に多数の家畜を飼育する「密飼い」が行われるようになったこと,規模に見合った防疫体制がとられていなかったことをあげている。
・アニマルウエルフェアの概念が抜け落ちた日本の畜産
そもそも、宮崎県も含めた日本で過密飼育が行われているのは、アニマルウェルフェアという概念が欠落しているためです。
アニマルウェルフェアについては、以下の2本の記事で紹介していますので、気になる方はどうぞ。
>>日本と海外のアニマルウェルフェアの現状比較【日本は超遅れてます】
>>アニマルウェルフェアを知ってる?安全な肉や卵の必須条件だよ
アニマルウェルフェアとは、家畜の欲求を満たした飼育で健康的な生活できるようにする畜産のあり方です。
EUなどの海外では、アニマルウェルフェア対応の製品は当たり前に消費者から選ばれています。
⇒鳥インフルエンザ時に放し飼いは非常識?放牧卵生産者が語る感染拡大の原因
僕は、放し飼いで卵を生産する生産者から卵を購入しています。
その方に、鳥インフルエンザが流行したときの話を聞いたことがあります。その時のポイントは以下の通りです。
・周りの養鶏農家がバタバタと鳥インフルエンザで倒れていく中で、僕が育てる鳥は1羽も感染しなかった
・家畜保健所も放し飼いを辞めるように指導に来たが従わなかった
・理由は鶏舎に詰め込みストレスに満ちた生活を鶏に強いれば、逆に免疫力が低下して感染すると思ったからだ
ちなみにこの方の農場は、写真のような感じです。
密どころか、超自由に鶏達が走り回っていますw
このような話を聞いている僕は、やはり過密飼育と鳥インフルエンザの関連性は強いと思わざるを得ないのです。
参考:平飼い卵はなぜ安全なのか?養鶏農家が語るアニマルウェルフェア
宮崎県の繰り返される鳥インフルエンザ【行政と農家は及び腰】
長谷川先生の論文に話を戻します。
論文の中には以下のように書かれていて、宮崎県は過密飼育と伝染病の拡大の因果関係を認めていません。
宮崎県は口蹄疫からの再生・復興に向けた検討課題として・・<省略>・・
地域振興対策などを掲げているが,高い県内飼育密度については口蹄疫感染拡大の直接の要因ではないとしている。
でもですね、随分前の記事になりますが、2011年9月に読売新聞の宮崎版で以下のような記事が掲載されました。
昨年、県内に甚大な被害をもたらした口蹄疫で、国や県の検証委員会は、家畜の「過密飼育」が拡大の一因になったと指摘。県は再発防止策の一環として、過密の解消を検討し始めた。
意見交換の場で、県の担当者は、牛と豚の頭数に対する都道府県面積の比率を提示。鹿児島県に次いで2番目に狭いことを示して、過密飼育をアピールしたが、農家側の抵抗は想像以上だった。
出典:2011年9月23日 読売新聞
恐らく、この意見交換で、農家側の理解が得られなかったのでしょうね。
なので、宮崎県は過密飼育と家畜伝染病の関係を認めることができないのと推察されます。
・畜産農家も経営が成り立たなくなるので反発を繰り返す
ちなみに、書かれてある「農家側の抵抗」とは、以下の言葉が記事に書かれていました。
・頭数を減らせば収入が減る
・畜産県なら飼育密度が高くなるのは当たり前だ
基本的に、農家も仕事で畜産経営を行っているため、過密飼育を辞めれば収入が減って死活問題です。
で、結局、このあたりの問題は、僕ら消費者にもあると思うのです。
僕らが、価格でお肉や卵を選んでいる以上、農家が過密飼育をやめることは難しいでしょう。
そうなると、鳥インフルエンザって、行政や農家のせいだけではなく、僕たち消費者にも原因があるんですよね。
どうか、メディアの皆さん、多くの消費者にこのような事実をもっと伝えて下さい。
これ以上、家畜や農家が苦しまないためにも、僕ら消費者は正しく飼育されたお肉や卵を選ぶ必要があると思うのです。
自分や家族の健康のためにもね。