✓そもそも、野菜の味に違いはあるのかな?
✓もし、違いがあるとしたらその理由は何だろう?
✓おいしい野菜を判断する方法は、ないのだろうか?
味覚の敏感な方であれば、上記のことは薄々気になっていることだと思います。
僕は春夏秋冬で年間100種類以上の野菜を作る有機農家ですが、プロの僕の目から見ても野菜の味の違いがあるのは紛れもない真実です。
結論から言えば、野菜の味に違いがでるのは、与える肥料の量が影響しています。
この記事を読めば、肥料によって野菜の味がどのように影響を受けるのか?
そして、素人のあなたでも、美味しく安全な野菜を判断する方法が分かるでしょう。
この記事の目次
野菜の味の違いは肥料の量の違い
先日、僕は以下のツイートをしました。
「野菜はどれ食べても同じ」
— Yoshiki ※レストランオーナーの呟き (@chiisanate_0609) November 12, 2020
ではない。
最近、実験してみた。
・春菊を種から育てる
・1つは自分の有機jas認証ほ場に
・もう一つは義父の畑両方に
・ちなみに、義父の畑は一般の畑
結果、味は全く違っていた。
その理由は、肥料だと思う。
興味深かったので、後日、記事にまとめてみよう。
「野菜の味なんてみんな同じだろ」僕は、昔、そう思っていました。
でも、有機農業をして自分で野菜を作るようになってから、断言できるようになりました。
野菜の味は確実に違います
・なぜ春菊が不味くなったのか【違いは畑の土だけ!】
結論から言えば、野菜の味の違いは農家が与える肥料の量によって違います。
もちろん、品種などの要因もありますが、この記事では自分が体験した春菊を例に解説しますネ。
野菜の品種による味や栄養価の違いは、以下の記事で詳細に解説しています。
>>有機野菜の味や栄養価の違いは?【結論:今と昔の野菜の違いです】
⇒実験の内容とその結果【違いはマジで畑の土だけ】
サクッと、実験の内容とその結果を書いておきます。
・8月に春菊の種をまいて苗を作り、9月の下旬頃に定植
・このとき、植え付けた畑は有機JAS認証ほ場の自分の畑ですが、苗が数株余ったので義父の畑にも植える
・結果、自分の有機畑から採れた春菊は、クリーンな味で苦味のないものになる
・一方、義父の畑の春菊は苦くてエグい春菊になる
イメージしやすいようにイラストにしておきますね。
同じ日に種をまき、同じ日に植え付け、同じ肥料を使い、同じ人(僕)が管理して、違うことと言えば、畑の土くらいです。
※余った苗なので、当然、品種も同じです。
⇒義父の畑は、たい肥や肥料を大量に使用
スーパー鋭い味覚を持つ僕の妻も、春菊を食べ比べてあまりの違いに驚きを隠せない様子でした。
・なぜ、自分の畑で作る春菊はクリーンな味で苦味がないのか?
・なぜ、義父の畑で作った春菊は苦くてエグかったのか?
畑の持つ主である義父に聞き取りをするなどして、2つのほ場の違いを調べてみました。
そして気付いたのが、畑に投入するたい肥や肥料の違いです。その具体的な違いは、以下のとおりです。
・僕のほ場では、長年、自分で作るたい肥や肥料を気持ち程度にほんのちょっぴり与える
・義父の畑では、長年、量販店で購入した、たい肥や肥料を大量に与える
違いはたったこれだけです。
⇒僕の失敗:畑の土に残っている肥料が分からなかった
ここであなたは、不思議に思われたかもです。
理由は先程のイラストでは、「どちらの畑も収穫までに、1回、自作の米ぬか肥料を与える」とあるからです。
確かに、僕は、春菊の生育期間中に1回の米ぬか肥料をどちらの畑にも与えました。
でも、義父が今まで畑に散布し続けていた、たい肥や肥料の残留ことまでは頭に入っていませんでした。
つまり、義父の畑は僕が与えた1回の肥料の他にも、今まで義父が畑で使用した肥料の効果が残っていたのです。
・肥料が多いと野菜は苦くエグくなる話
安全な野菜の新常識
— Yoshiki ※レストランオーナーの呟き (@chiisanate_0609) August 14, 2020
✓色が濃いより薄い方がいい
✓大きいより小さい方がいい
写真は、いずれも左は僕が作った野菜
大きくて、色の濃い右の野菜は消費者受けするが、
肥料を吸いすぎた肥満で、不健康な野菜ということを覚えといてネ pic.twitter.com/7rsZmWf5bT
これは、確実に言えることですが、肥料が多いと野菜の味は不味くなります。
以下の記事にも、詳しくまとめていますので、気になる方はどうぞ。
>>有機野菜=安全は嘘!【農家の本音】野菜は色が薄くて小さい方を選べ
結局、義父の畑の春菊は、窒素肥料成分が畑に残留して肥料を吸いすぎた不健康野菜だったということです。
⇒肥料が多い野菜が不味くなる説の客観的意見
それは、お前独自の意見だろ。。こんなツッコミが入りそうですw
僕は、芸能人や有名人に全く興味がありません。
そんな僕が唯一尊敬し、情報を追っているのが日本の篤農家で、環境活動家の岡本 よりたかさん。
彼も、書籍「野菜は小さい方を選びなさい」で同じことを言っています。
岡本さんも、農業を営んでいますが、僕が経験したこと同じように、美味しく安全な野菜のポイントを「肥料」においています。
・化学肥料と有機肥料の違いは味に影響しない
「化学肥料は野菜を不味くし、有機肥料は野菜を美味しくする」
このように言う方もいますが、僕の経験上、そんなことはありません。
化学肥料を使っても野菜は美味しくできます。
実際に、化学肥料を上手に使って美味しい野菜を作る農家さんも多くいます。
問題は、先程から書いている化学肥料や有機肥料のような質の話ではなく、農地に投入する肥料(窒素成分)の量です。
野菜が要求する肥料分を補うために、ほんのちょっぴりの化学肥料を与えるのと大量の有機肥料を与えるのとでは、前者の方が安全で美味しい野菜ができると思います。
この辺りの詳しい話は、以下の記事で解説しています。
>>【問題あり】有機野菜は肥料で危険になる!【有機JAS農家の本音】
・野菜を生でかじる癖をつけると味の違いが分かるようになる
野菜のアク抜きって聞いたことありますよね。
アク抜きとは茹でるなどして、野菜の細胞壁を壊し、アクを取り除くことです。
ここまで読んだあなたは、適切な量の肥料を与えられた野菜には、苦味やえぐ味を除くための過度なアク抜きは必要ないことが分かるはずです。
現代人は確実に野菜の本当の味が分からなくなっていますし、ニーズがないので生産者自身も本物の野菜の味を追求することをしません。
本当の野菜の味の違いを知るためには、野菜を生でかじってみるのが一番です。
逆に言えば、ごまかしのない本当の野菜の味は生でしか味わえません。
大根でも、春菊でもキャベツでもレタスでも。。何でもでもかじってみて下さい。
そうすれば、あなたは必ず野菜の味の違いが分かるようになります。
野菜の味の違いだけではない!野菜が上手く育たない義父の畑の異変
実は、義父の畑で作る野菜は、野菜の味が違うだけではありません。
野菜が上手く育たたないのです。
衝撃の写真付きで、具体的に解説しますね。結論から言えば、これも肥料のせいです。
・【比較1:大根】大根は虫食いで大きく成長せず
春菊の件以来、僕は、義父の畑で度々実験をするようになりました。
上は僕の有機畑で作った大根の写真、下は同じ時期に種を播いた義父の畑の大根です。
不思議でしょ!
僕が同じ日に、同じ管理をして作った大根なのにこんなに違うんです。
義父の畑は、とにかく虫食いが酷くて上手く成長しませんでした。
ちなみに僕は、病気や虫の被害に一切農薬を使わない主義なので、写真のような状態になったら食すことはできません。
・【比較2:春雷】春雷は病気が入り突然腐れた
こちらは春雷(つぼみ菜)の写真ですね。
これはひどい。上が義父の畑の春雷、下が僕の畑の春雷です。
同じ人間が作った野菜とは思えませんよね。春雷に至っては、病気が入り突然腐っちゃいましたw
くどいようですが、僕が同じ日に、種をまき同じ管理をしたものです。
ここで、もう一度、先程紹介した岡本さんの本から引用しますね。
見事にここに書かれてあることを、僕自身が実験(証明)したわけです。
正直に言うと、有機農業のコツを分かってきて、「自分だったらどこで作っても同じように美味しい野菜が作れる」という自負がありました。
でも、結果がこれです。
やはり、野菜を作るには、健全な土が重要なのですね。
【究極は無肥料栽培】農薬が必要になる負のスパイラル
まとめに入ります。
農家がなぜ、農薬を散布する必要があるかを理解できましたよね。
そのメカニズムは、以下のとおりです。
・野菜を早く成長させ、容姿が立派な野菜を作ろうと肥料をたくさん使う
・すると、野菜が苦く不味くなる(←ヒトが野菜嫌いになる原因)
・肥料を吸いすぎた野菜は、人間が食べすぎて病気になるのと同様、病気になり虫の攻撃にさらされる
・それを防ごうと農家は農薬を使う
多くの農家は、この悪循環にはまっています。
結論、農家が肥料の与えすぎを止めれば、農薬もいらなくなるし、美味しい野菜も食べることができるんですよね。
僕の究極の目標は、畑に完全に肥料を入れないこと。いわゆる、無肥料栽培です。
野菜をより美味しく、安全なものにするにはこれしかないと思っています。